東南 アジア9か国とその他の国・経済統合体との人口比較
世界経済の中で、急速な成長を遂げてきている東南アジア。今回取り上げる9カ国(インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマー、マレーシア、カンボジア、ラオス、シンガポール)の人口を合計すると5億5千万人以上にもなり、単なる生産拠点としてだけではなく、市場としても大きな存在になってきています。下に示した他の国・地域との人口を比較したグラフをご覧いただいても、生産と消費の基礎となる人口の多さ、高い潜在能力がうかがい知れます。
中国の次を見据える中で、日本のビジネスマンにとってこの地域が、さらに身近で重要な存在になることは間違いありません。実際に生産拠点としてまた市場として、関わりのある企業は増えてきており、日本企業だけでなく中韓をはじめ他国の企業も進出してきています。
20世紀の混乱を乗り越え、工業化、先進国化を推し進める東南アジアに、今後の世界経済のけん引役となることが期待されています。本講座のテキストでは、それぞれの国の「文化」、「国民性」、「日本との関わり」などを分かりやすく解説します。
ンドネシア Republic of Indonesia ィリピン Republic of the Philippines
首都:ジャカルタ 人口:約2億3千万人
世界4位の人口と15位の面積を持つ、東南アジア随一の大国。17世紀からオランダによる植民地支配を受けるも、1949年に独立。基本的には農業国であり、ココナッツ、カカオ、キャッサバ、天然ゴムなどを生産する。しかし鉱業資源にも恵まれ、日本のLSG輸入国第1位である。2004年以降は原油の輸入量が輸出量を上回る状態であるため、OPEC(石油輸出国機構)を脱退した。

首都:マニラ 人口:約9千4百万人
東南アジアの島国でありながらイスラムの流入、スペインとアメリカ合衆国による植民を受けてきた。1986年に現在の体制が成立。基本的には農業国であり、サトウキビ、タバコ、バナナなどを産出する。スペイン時代に始まったプランテーション農業もまだ生きている。また未開発の金、銅、亜鉛の鉱床が残っており、フィリピン鉱業の潜在能力は非常に高いものがある。

トナム Socialist Republic of Viet Nam イ Kingdom of Thailand
首都:ハノイ 人口:約8千4百万人
中国と国境を接していることで、紀元前よりその政治的・文化的影響を受けてきた。19世紀にはフランスによる植民地支配を受け、独立の際に南北分断。その後ベトナム戦争を経て1976年現体制が成立。政治的には、ベトナム共産党による一党独裁体制である。人件費が中国の6割程度で、中国に次ぐ「世界の工場」になりうるか注目を集めている。首都はハノイに置くが、最大の都市はホーチミン。

首都:バンコク 人口:約6千5百万人
東南アジアの国々において唯一、植民を経験していない。立憲君主制を敷いており国王が国家元首ではあるが、国政の最高責任者は首相である。世界最大のコメの輸出国であり、観光産業にも力を入れている。貧困撲滅のため教育にも力を入れており、識字率は日本、シンガポールと並んでアジア屈指、世界でも高い水準にある。性転換手術が合法で、ニューハーフが多くいることでも有名である。

ャンマー Republic of the Union of Myanmar レーシア Malaysia
首都:ネーピードー 人口:約6千2百万人
イギリス統治領から独立した後、1962年に軍事クーデターが起きて以来軍事政権が続き、欧米諸国は経済制裁を発動させていた。そんな中、インドや中国などは、この「アジア最後の経済未開拓市場」と呼ばれるミャンマーへの投資に積極的であった。2011年に民主化が果たされ、欧米諸国は徐々に態度を軟化させている。世界のルビーの9割を産出するなど、天然資源も多い。

首都:クアラルンプール 人口:約2千8百万人
17世紀よりイギリスに植民されていたが、他の多くの東南アジアの国々と同様に、第二次世界大戦終戦を機に独立。イスラム教を国教としている。立憲君主制で、国王は国内の首長の中から互選で選出される。近年、アジアにおけるIT先進国となるべく経済政策を推し進めており、また20世紀までの世界で最も高いビル、ペトロナスツインタワーを建設するなど、急速に発展を遂げている。

ンボジア Kingdom of Cambodia オス Lao People's Democratic Republic
首都:プノンペン 人口:約1千3百万人
フランスからの独立後、ベトナム戦争の混乱を経て1993年に立憲君主制の国家として今に至る。1人あたりのGDPは世界平均の10%にも満たない最貧国であるものの、外国からの投資が大きな伸びを見せている。リエルという自国通貨が存在するが、通常流通しているのは米ドルである。韓国、中国による経済進出が目立つが、法整備支援などでは日本が大きな存在感を見せている。

首都:ビエンチャン 人口:約620万人
唯一、海に面していない東南アジアの国であるが、メコン川が国土を貫いて流れている。19世紀にフランス領インドシナ連邦に編入されるも、1953年に独立。その後内戦を経て、社会主義国家型の一党独裁体制を敷く。キープという通貨を持つが、タイのバーツと米ドルも使用可能。水力発電が盛んで東南アジアのバッテリーと呼ばれるほどであるほか、未開発の鉱床が多く存在する。

ンガポール Republic of Singapore
首都:シンガポール 人口:約518万人
東南アジアのほぼ中心に位置し、4つの公用語を持つ。1965年にマレーシア連邦から都市国家として分離・独立を果たす。以来、人民行動党による一党独裁体制が続いている。1人あたりのGDPは世界でも上位であり、富裕世帯の割合が世界で最も高い。ITを駆使した知識集約国家を目指しているが、女性の高学歴化・晩婚化から超少子化が危惧されているなど、抱えている問題も少なくない。

著者プロフィール
【東南アジア全体編】
片岡樹(かたおか たつき)
筑波大学第三学群国際関係学類卒業後、同大学大学院地域研究研究科を経て九州大学大学院比較社会文化研究科修了。博士(地域 研究)。目白大学、神田外語大学、芝浦工業大学等での非常勤講師を経て、2008 年より京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授。著書に『タイ山 地一神教徒の民族誌−キリスト教徒ラフの国家・民族・文化−』(風響社、2007 年)等がある。

永田貴聖(ながた あつまさ):京都学園大学法学部卒業後、立命館大学大学院先端総合学術研究科テーマ領域・共生博士課程修了。博士(学術)。専門は文化人類学、社会学。現在、立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー、神戸市外国語大学ほか非常勤講師。著書に『トランスナショナル・フィリピン人の民族誌』(ナカニシヤ出版、2011年)等がある。



【ベトナム編】
伊藤未帆(いとう みほ)
専門はベトナム地域研究、教育社会学。ベトナムの教育制度と人々の進学熱、社会との関わりについての研究を行っている。博士(学術)。2010年より、日本学術振興会特別研究員(PD)。主な著書に、「ドイモイ期ベトナムにおける少数民族優遇政策と高等教育進学:少数民族大学生の属性分析を通じて」(『東南アジア研究』2011年、49-2、pp.300-327)がある。

小川有子(おがわ ゆうこ)
専門はベトナム地域研究、主に農村地域における現代史と現在の社会構造の変遷について研究している。在ベトナム日本国大使館派遣員(1992〜94)、在ベトナムJICA事務所企画調査員(1996〜97)などを経た後に学術研究に戻り、北部ベトナム村落での現地調査を重ねている。現在、東京大学特任講師。

加藤敦典(かとう あつふみ)
専門は文化人類学。ベトナムの農村における住民自治の調査をおこなう。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(人間科学)。2011年より、東京大学特任助教。

金村久美(かなむら くみ)
名古屋大学法学研究科特任講師。博士(学術)。専門は言語学・音声学・日本語教育。ベトナム語母語話者の日本語音声習得に関心を持ち、名古屋大学博士課程在籍中にベトナム国家大学ハノイ校人文社会科学大学にて約2年半ベトナム語を学ぶ。2007年より現職。同年〜2009年にハノイ法科大学内名古屋大学日本法教育研究センター(ベトナム)設立のためハノイに駐在。日越通訳、ベトナム語教育、ベトナム交流コーディネイトにも携わる。



【タイ編】
岩澤孝子(いわさわ たかこ)
2002年広島大学大学院国際協力研究課博士後期課程修了(学術博士)。ラチャパット大学ナコンシータマラート校日本語講師、カリフォルニア大学リバーサイド校ポスドク・フェロー、チュラロンコーン大学客員研究員などを経て、2010年より北海道教育大学教育学部(岩見沢校)准教授。専攻は民族音楽学、舞踊学。タイ舞踊家でもある。



【インドネシア編/シンガポール編】
伏木香織(ふしき かおり)
東京芸術大学音楽学部楽理科卒業、1996年〜1998年インドネシア国立芸術大学デンパサール校伝統音楽(カラウィタン)科留学。帰国後、大正大学大学院文学研究科比較文化専攻博士前期課程、後期課程修了。2006年〜2007年インドネシア国立芸術大学デンパサール校客員研究員、2011年シンガポール国立大学客員研究員。現在、東京芸術大学総合芸術アーカイブセンター特別研究員、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー、東邦音楽大学、桐朋学園大学、日本女子体育大学、慶應義塾大学、各非常勤講師。



【インドネシア編】
中田有紀(なかた ゆき)
筑波大学大学院教育学研究科修了(修士(教育学))。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程単位取得後退学。現在は、東洋大学法学部助教として勤務。インドネシアのイスラーム教育、とくにクルアーン教育の制度化ついて研究。主な論文に、「インドネシアにおけるイスラーム学習活動の活性化―大学生の関与とそのインパクト―」『アジア経済』第46巻第1号(2005年)pp.35-52、「プンガジアン・クルアーンからクルアーン幼稚園へ」西野節男・服部美奈編『変貌するインドネシア・イスラーム教育』東洋大学アジア文化研究所・アジア地域研究センター,2007年 、pp.63-92などがある。



【ラオス編】
虫明悦生(むしあけ えつお)
専門:東南アジア地域研究(農業地理、ラオスの生活文化)
京都大学農学部、同農学研究科熱帯農学専攻修士課程終了後、京都大学東南アジア研究所、ラオス国立大学農学部、ラオス国立経済研究所、ラオス国立図書館等に所属して、「ラオスの人と自然の関わり」を大テーマに、ラオスの土地利用と農村開発、郷土民謡の研究を続けてきた。
現在は、フリーランスのラオス文化研究家としてラオス滞在中。ケーン(ラオス笙)奏者としても活動している。
主な著書に、『ラオスを知るための60章』(共著)などがある。



【ミャンマー編】
飯國有佳子(いいくに ゆかこ)
大阪外国語大学ビルマ語学科卒業後、在ミャンマー日本大使館専門調査員、ミャンマー連邦教育省大学歴史研究センター客員研究員を経て、総合研究大学院大学文化科学研究科修了。博士(文学)。法政大学、東京外国語大学非常勤講師を経て、2012年より大東文化大学国際関係学部講師。
著書に『現代ビルマにおける宗教的実践とジェンダー』(風響社、2011年)、『ミャンマーの女性修行者ティーラシン―出家と在家のはざまを生きる人々 』(風響社、2010年)等がある。

池田一人(いけだ かずと)
2008年東京大学博士号(学術)取得。現在、東京外国語大学ほかで非常勤講師。専門はミャンマー(ビルマ)近現代史。少数者の視点からのビルマ史の再構築や民族形成史、民族問題形成史などが研究テーマ。

藏本龍介(くらもと りょうすけ)
1979年、福岡県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在学中。専攻は文化人類学、上座仏教徒社会。主要著書「ミャンマーにおける仏教の展開」『静と動の仏教』、奈良康明・下田正弘(編)、佼成出版社、2011年。

小島敬裕(こじま たかひろ)
1999年よりミャンマーのWIN日本語学校に勤務した後、ヤンゴン外国語大学に留学。2003年よりミャンマーの上座仏教と社会に関する研究を開始し、2010年に京都大学より博士号(地域研究)を取得する。現在、京都大学地域研究統合情報センター研究員、大阪大学、滋賀大学、京都精華大学非常勤講師。
著書に『中国・ミャンマー国境地域の仏教実践―徳宏タイ族の上座仏教と地域社会』(風響社、2011年)等がある。

水野敦子(みずの あつこ)
大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程修了、博士(経済学)。外務省専門調査員(在ミャンマー大使館)などを経て、九州大学大学院経済学研究院助教。
近著に「ミャンマーの対中経済関係−深まる経済依存の行方」尾高煌之助・三重野文晴編著『ミャンマー経済の新しい光』(勁草書房)所収243-270頁、2012年9月。



【カンボジア編】
田代亜紀子(たしろ あきこ)
専門:東南アジア地域研究、文化遺産研究
(独)国立文化財機構奈良文化財研究所 企画調整部国際遺跡研究室特別研究員(アソシエイト・フェロー)
主な著書に「アンコール・ワットを読む」(共著)「グローバル/ローカル文化遺産」(共著)などがある。

福富友子(ふくとみ ともこ)
専門:カンボジア語、カンボジア影絵芝居
東京外国語大学非常勤講師。ティー・チアン一座(大型影絵芝居)座員
主な著書に「旅の指さし会話帳19 カンボジア」(単著)「カンボジアを知るための62章【第2版】」(共著)などがある。



【フィリピン編】
木場紗綾(きば さや)
専門:フィリピン政治、住民組織化、都市下層研究、選挙政治
神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程修了(政治学博士)。
フィリピン大学研究員、在フィリピン日本国大使館専門調査員、衆議院議員秘書などを経て、現在は、特定非営利活動法人日本紛争予防センターに勤務。
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構調査研究本部研究会委員、神戸大学大学院国際協力研究科研究員も兼任。



【マレーシア編】
伊賀司(いが つかさ)
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構・主任研究員、神戸大学大学院国際協力研究科研究員、大阪学院大学非常勤講師。神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程修了、博士(政治学)。専門は比較政治、東南アジア地域研究。マラヤ大学研究員、インドネシア大学研究員、ロンドン大学東洋アフリカ学院ポスト・ドクトラルフェローなどを経て現職。

鈴木絢女(すずき あやめ)
福岡女子大学講師。1977年、横浜市出身。東京大学大学院総合文化研究科修了、博士(学術)。
専門は比較政治学。日本学術振興会特別研究員、マレーシア国立マラヤ大学研究員などを経て、現職。主著に『<民主政治>の自由と秩序: マレーシア政治体制論の再構築』(京都大学出版会、2010年)。

坪井祐司(つぼい ゆうじ)
東洋文庫研究員。東京大学大学院人文社会系研究科修了、博士(文学)。専門はマレーシア近代史。イギリス植民地期にマレー人という民族集団がどのようにして形成されたかを研究テーマとしている。近著に「英領マラヤにおけるマレー人概念の土着化:スランゴル州におけるマレー人エリート層の形成」『東洋学報』93-2(2011)。

東條哲郎(とうじょう てつお)
在マレーシア日本国大使館専門調査員。1979年、東京都出身。東京大学大学院人文社会系研究科修了、博士(文学)。専門はマレーシア近代史。主著は「19世紀後半マレー半島ペラにおける華人錫鉱業:労働者雇用方法の変化と失踪問題を中心に」『史学雑誌』117-4 (2008年)。

福島康博(ふくしま やすひろ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員。1973年、東京都出身。専修大学商学部商業学科および中央大学文学部社会学科卒。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学を経て、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。桜美林大学国際学研究所非常勤研究員を経て、2011年より現職。専門は、イスラーム金融論およびマレーシア地域研究。主な著書は、共編著『東南アジアのイスラーム』(東京外国語大学出版会、2012年)など。

光成歩(みつなり あゆみ)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。専門はマレーシア現代史。マレーシア・シンガポールにおけるイスラーム司法制度の成立と運用の歴史的展開について研究中。主な論文『現代マレーシアにおける「改宗・棄教」をめぐる語りの構造:非ムスリムによる「リナ・ジョイ係争」への支持言説を手がかりに』(アジア地域文化研究、2009年)。

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