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残念だった中国の「おもてなし」(観光地編)

観光・サービス業の基本は、いかなる国籍、宗教、人種のゲストに対しても公平に接し、政治的なイデオロギーを持ち込まないことだと思います。宗教・民族問題に疎い日本人は、「そんなことは当たり前の話」と思うでしょうが、世界的にみると、いぜん黒人が差別されたり、ムスリムへの偏見があったり、マイノリティーが冷遇されたりと、残念な場面が少なくありません。


その点、日本は完璧な「おもてなし」ができている国と断言していいでしょう。いかに対中感情が悪化しても、中国人観光客が嫌がらせを受けたというようなニュースは聞いたことがありませんからね。

日本にシンパシーを持ち、日本へ来てくれた中国人をターゲットにするなどナンセンスの極みです。そして、高級ホテルであろうとカプセルホテルであろうと、高級レストランであろうと大衆食堂であろうと、接客などのサービスにムラがない点も、日本のイメージを押し上げている要因です。こうした「均一力」は、日本人ならではの特性という気がします。

一方、中国の「おもてなし」はどうかというと、正直、日本のレベルには遠く及びません。もちろん、「サービス業」という概念すらなかった改革開放以前の中国と比べれば格段に進歩してはいるのですが。

▲大人気の観光地に、こんな不快なメッセージが
たとえば、今年6月に華々しくオープンしたばかりの上海ディズニーランド。筆者は「はたしてうまくいくだろうか……」と疑問視していたのですが、案の定、「サービスが悪い」「マナーが悪い」と、はやくも悪評が相次いでいるそうです。ホスト側とゲスト側、双方の意識が変わらなければ、真の「夢の国」となるのは「夢物語」のままでしょう。ディズニーをしてこの有様ですから、日本のレベルに追い付くまでには、まだまだ時間を要しそうです。

今春、昔ながらの懐かしい街並みがほぼ完全な姿で残る、湖南省の鳳凰古城を訪れました。
年間の観光客数はなんと120万人! 日本からはアクセスが不便なため、日本人観光客はそう多くないようですが、とはいえ世界的に知られた大人気観光地です。

そんな観光収入だけで成り立っている場所にもかかわらず、写真のような不快なボードを随所(主にバーやレストラン)で目にしました。
「日本人お断わり」「釣魚島(尖閣諸島)は中国の領土だ」――こんなメッセージを突き付けられたなら、せっかくの楽しい旅気分が台無しですよね。日本人だけではなく、他の外国人観光客がみても愉快ではないものだと思います。
かつて日本が上海租界で「中国人と犬はお断わり」と侮辱していたことへの意趣返しかもしれませんが、鳳凰古城の美しい風景に汚点を残したことは事実です。

ただ、鳳凰古城自体は素晴らしいところで、旅館のオーナー夫婦はとても親切にしてくれましたし、滞在中、まったく嫌な思いをすることがありませんでした。それだけに、一部の心ないエセ愛国者のせいで、日本人観光客の鳳凰古城に対する印象が最悪になってしまうとしたら、実にもったいないと思うのです。

実は、日本人にどんな対応をするのか興味もあり、何食わぬ顔をして入店してみようかとも考えたのですが、結局は行かずじまいでした。もし罵声でも浴びせられたら、その後、ずっと暗い気持ちで過ごさなければならないと思ったので……。
ちょっと弱気でしたね。次回は勇気を出して入店し、その体験談をご報告したいと思います(笑)
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