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連載コラム
第8回:「フレームワーク思考力とは?」 〜高所から作戦を立てる〜
「前回の「仮説思考力」に続いて今回は、地頭力の基本となる「3つの思考力」の2つめのフレームワーク思考力について解説したいと思います。

いまなぜフレームワーク思考が重要なのか?
ビジネスの場面で「フレームワーク」という言葉を耳にすることが多くなりました。これまではコンサルティング業界等、限られた世界でしか用いられてこなかったこの言葉がなぜ広まってきたのでしょうか?フレームワークを使って考えるというのはどういうことかは後述するとして、ここでは「ある考え方の枠組みを使って物事を見る」というような定義にしておきましょう。
いくつか理由は考えられますが、まず挙げられるのは本連載コラムのはじめにも述べたようにインターネットの発達や閉塞化した経済状況の中で「考える」ことの重要性が相対的に上がってきたことが挙げられるでしょう。そのために不可欠になるのがフレームワークという考え方です。その中で特に重要となる場面が「思考の癖をなくして考える」と「複数関係者で考え方を共有する」という状況で、こうした場面が増えてきているというのが、「フレームワークを使って考える」ことが望まれる具体的な理由と考えられます。
では教育担当者の皆さんのお仕事では具体的にはどういう場面が相当するのでしょうか?何の仕事であれ、「何かをリストアップする」という場面では必ず各個人が持つ「思考の癖」というものを念頭に置く必要があります。例えば「いま足りないトレーニングコースは?」というお題でアイデアをリストアップするとします。経理経験者の人は会計・簿記・財務関連のものがすぐに頭に浮かぶでしょうし、営業経験者の人は対人スキルやコミュニケーション関連のことがまず思い浮かぶかも知れません。
このように、人は誰しも自分の得意分野や記憶が強く残っている領域を中心に物事を考えてしまいます。これが「思考の癖」の一例です。このことの弊害は、自分があまり強くなくもれが発生しやすい領域について考えにくいこと、そして、上記のような違う思考の癖を持った人同士のコミュニケーションがやりにくくなることです(場合によっては、相手がどの分野のことを言っているのかもわからないことがあります)。

フレームワーク思考とは「思考の白地図」を用いること
ここで、「思考の癖」をなくして考えたり、異なる癖を持った人同士のコミュニケーションを円滑にするための「フレームワーク思考」について、具体的な例をあげて解説したいと思います。
フレームワーク思考とは、こうした思考の癖をなくすために、まずはじめに高所から全体を眺めて作戦を立てるといったようなイメージです。戦国武将で言えば、はじめて攻め入る土地をまず山上から眺めてどこに何があるかの全体像を把握してから攻略の作戦を立てていくというイメージです。これと逆なのが、「とにかく目に付いた攻めやすいところから攻めていく」という攻略方法で、これが「思考の癖を持った状態」ということです。
では戦ではなくビジネスの場面で「考える」という状況でこれをどうやって実践するのか?そこでお勧めしたいのが「思考の白地図」をつくるということです。では思考の白地図とはなにか?これは具体例でいうと、「縦軸」と「横軸」というものの視点の組み合わせをもったマトリックス型の表が相当します。例えば、先ほどのトレーニングコースのアイデア抽出で言えば、横軸に「自社に必要な職種」という軸を用意して、その観点でもれなくピックアップする。そして縦軸には「習熟度」という軸を用意して、その観点で「初級」「中級」「上級」のような形でピックアップして、それを表形式にしておく(これがこの場合の「思考の白地図」になります)。そういう準備段階をしてからアイデア抽出に入っていけば、各人が持つ思考の癖が明確になるとともに、視点のもれがなくなり、また複数の関係者の間でも「ここが足りない」とか「ここは来年の強化ポイントだ」といったディスカッションが格段にしやすくなるでしょう。
以上お話してきたのは、フレームワーク思考の実践例でした。世の中で一般的に言われている「フレームワーク」というのは、各分野毎によく使われる「思考の白地図」のことです。例えば経営分析をするときの3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)とか人材育成関連で言えば能力をWillとSkillに分けるというのもフレームワークといえるでしょう。
次回は「抽象化思考力」についてお話します。



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