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連載コラム
第10回:思考回路を起動するために」〜「人生の目覚まし時計」を鳴らす〜
これまで「考える力」としての地頭力についてその6つの基本要素等を解説してきました。今回と次回では、そうした考える力を普段から鍛えるにはどうすればよいかについて解説したいと思います。

思考停止から脱却するには?
まず「考える」という行為の何が難しいのかを考えてみましょう。
これは英会話やダイエットの難しさと共通するところがあります。それは、まず「考え始める」ところに一つ目の大きなハードルがあるということです。英会話もダイエットも「いつかやらなきゃ」と思っていてもなかなか実際に始めるとなるとうまくいかないことが多いのではないでしょうか。実は「考える」という行為も同じなのです。私達は普段頭を使っているようでいて、実は全く考えていないのです。「いつもの時間に」目を覚まし、「いつもと同じように」着替えて歯を磨き、朝番組のニュースと占いを見て、「いつもと同じ電車で」出勤し、「インターネットで検索して」コピー&ペーストで資料を作成し、「前回と同じ」企画書を作って、帰りは「いつもの居酒屋で」『とりあえずビール!』といって一日が終わります。これでは一切自分の頭を使って考えることなく毎日が過ぎていくことでしょう。
ではどうすればこれまで述べてきたような「思考力」を働かせられるようになるかのヒントをご紹介しましょう。ここでは本連載の第7回でご紹介した「仮説思考力」を普段から意識するにはどうすればよいかについてお話します。仮説思考力とは「結論から考える」ことでした。つまり「終わりから考える」というふうに「こちら側から」ではなく「向こう側から」考えるということです。思考停止している人は常に「いまの自分から」発想するわけですが、考えている人というのは「将来の自分から」発想するという具合です。

「人生の目覚まし時計」を鳴らす
ではどういう場合に人は「向こう側から」考えるのか? 実は私たちは皆その答えを知っています。それは「時間に切羽詰った」ときなのです。例えば夏休みの宿題がぎりぎりまでできていないとき、あるいは大事な約束がある朝に二度寝して遅刻ぎりぎりに目が覚めたときに皆さんはどう考えるでしょうか? 恐らく「最終地点から逆算して」考えるのではないでしょうか。
このように私達は皆、「時間に切羽詰った」ときには後ろから(向こう側から)考えれば一番効率的に物事を進められるということを本能的に知っています。ではなぜいつもはこうせずについつい「こちらから」考えるという思考停止の症状が出てしまうのでしょうか。それは上で述べたことと逆のことが起きているからです。つまり、「時間に切羽詰っていない」ということです。そう考えてみれば自ずと「思考回路を起動する」ために必要なことは何かという問いへの答えは出るでしょう。常日頃から仮説思考している人というのは、誰よりも時間の重要性を強く感じているのです。一般的には若い方が有利と思われる思考力の訓練ですが、私はいつも「地頭力を鍛えるのに年を食っていることで決定的に有利なことが一つある」と言っています。それは(いろいろな意味で)「残り時間が少ない」ということです。
あなたの「人生の目覚まし時計」は鳴っていますか? それとも「まだ時間はたっぷりある」と言って布団の中でだらだらと過ごしているでしょうか。

次回は今回に続いて「考え始める」ためのヒントについてお話します。


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