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―この本を拝見させていただいたときに「無所属の時間」という表現が面白いなと思ったんですが・・・・・・・。

特に男は役割でしか生きてないんです、社会的にいうと。たとえば○○会社の社長、部長、課長、という風にね、個人名じゃないでしょ?どこか匿名なんですよね。かといってじゃあ60になった時に、大半の人はその職場を離れるわけじゃないですか。
そうなった時に、じゃあ何を持って自分のアイデンティティを証明するんだっていうのもない。びっくりするのが、時々リタイアした方から名刺もらうと、「元○○会社社員」とかって書いてあるんですよ(笑)。おかしいでしょ?あるんですよ現実に。それってやっぱ辞めてからなにもないってことじゃないですか。
つまらんでしょ。そこがすべてのアイデンティティなんです。サラリーマンになって何年も経ってるのに「東大出身」とか大学のこと言ってる人ってやっぱりアホですよね。それは22歳で終わってるでしょうと。やっぱ才能とか人間というものにも減価償却っていう概念を持たないと。愛情もそうなんですけど(笑)。価値は減っていくわけです。メンテナンスしないと。形は残るけど。価値は減っている。

―作り手と受け手にはそこに違うものがあるということについて
ザ・ぼんちっていうのが「あれ〜?」というのが受けたと。ところがある程度やるともう飽きてしまうんです、やる方が。でもお客さんはそれを期待してるんです。で、やるほうが違うネタをやったら「なんだ?」ってことになるんですね。そのへんの見極めってのが大事ですよね。客のニーズとズレちゃうというか。
だから、僕は牧場型マネジメントというのが一番いいと思いますね。牧場の柵はゆるくしておいて、中身の草をおいしくする。その柵の中への出入りは自由だけれども、なぜかみんな逃げないで帰ってくる。どうしてかっていうと、その牧場の草がおいしいから。この草がインセンティブなんです。
地位、名誉、お金、待遇、チャンス、評価。その柵を開けておくというのはものすごく勇気がいるんですよ。帰ってこなかったらどうしようとか、でもそこの勇気とか度量を持たないと、人は育たないと思いますけどね。

―それは難しいといえば難しい。
でも楽ですよ。やっちゃえば。タレントなんてそういうもんです。だから吉本のタレントはやめないでしょ。悪口ばっかり言ってるけど。それはもうOK。

―そういうのもあって人事改革もされたということですね。
そうです。だから社員も本当はそうすればいいんですけどね。社長の悪口をおおっぴらに言える会社っていうのは、僕は素晴らしいと思いますね。

―結構ネタにしてますよね(笑)
そうなんです。だから、今までは客を捕まえにいくというか、マーケティングでもそうですよね。そうではなくて、客から来てくれる、選ばれるという魅力的な企業にならないといけないということだと思うんですね。

―宣伝しなくても売れるものとか口コミとかだけで売れるものとか。
お客様にとってどれだけ魅力がありますか。たとえばあなたという存在は魅力があるか、あなたの会社が魅力あるか、商品が魅力あるかということだと思います。

―それを創り出すのが大変ですよね。
そうですね。言うのは簡単ですが。それともう今までみたいに範囲を限ってこの業界で1位2位を競ってる場合じゃないじゃないですか。垣根も全部なくなっていって、お客様から見た括り方に変えていかなきゃならない。
巣鴨ってところあるじゃないですか。お年寄りの原宿。あそこへ行ってるお年寄りとね、実際の原宿行ってるお年寄りとね、どっちが魅力的かといったら、僕は原宿へ行ってるお年寄りのほうが魅力的だと思うんですよ。なぜかというと、若くなりたいという意思をもっているから。そういうマインドを持ったシルバーが増えていきますよ。昔の60とは違いますから、団塊の世代あたりのリタイアしている人たちは。マインドが変わってきていますから。
過去の郷愁に浸るんじゃなくて、若いとこ行ってっていうお年寄りが増えている。だからシルバーマーケットというのもこれから定義を変えないと。


―木村さんが主催されている有名塾というのも面白そうですよね?
どんな活動をされているんですか?

ところが日本の場合は悪い癖で結果を求めるんですね。たとえば、なんか免状をもらえるとかね、資格をもらえるとか。インプット型なんですよ。アウトプット型ではないんで。わかりにくいコンセプトなんですけどね。でもまあ、こういう形のほうが僕はいいんじゃないかと思ったんですけどね。ただ、お金儲けという意味で言うと、なかなかソリューションのない世界ですから、1回終わってまた1からというところがあるんで、難しくて大変ではあるんですけど、もうちょっと楽してね、お金をもうけられるソリューションがあるといいなあと。最後は水晶玉を売るしかないかなあと思ってるんですけど(笑)。

―でもそういうところに出てこられるだけでも素晴らしいと思いました。
そう、わけのわからないとこに行こうとする人たちは、その好奇心だけでも素晴らしいんです。好奇心って大事でしょ?好奇心っていのはやっぱり自分の賞味期限を延ばしますよね。だからその好奇心は失わないようにしたいなあと思いますね。

―本当はそれに来られないような人たちをもっと元気にしてっていうのが、人事の担当者とかもきっとそうなんじゃないでしょうか。
よく企業で2−6−2っていうでしょ。放っといても上の2割はがんばりますよね。6割はまあまあで、ダメなのが2割ということなんですが、僕はこのダメな2割が宝庫だと思ってるんです。真ん中の6割っていうのは放っとけばいいんですよ、大勢になびきますから。下の2割の中には実はダイアモンドの原石があるんじゃないかなという気がするんですね。もちろんハナから基本的な能力がないというやつは別ですけど、何かがあってそっぽ向いている、ヘソを曲げているというやつはちょっと方向性を変えてチャンスを与えてやれば絶対上の2割に迫ります。だから逆に言うとその下の2割は宝庫だし、そこに会社の問題は集約されている気がします。もし組織に問題があれば、解決のヒントはそこにあると思います。
でも、説得なんてしてはダメなんです。説得というのは、「説く人が得をする」と書くんですね(笑)。される人にはメリットがないんですよ。だから説得ではなくて、どうチャンスを与えてあげるかということだと思います。その我慢というか度量みたいなものが大事なんじゃないでしょうか。

■略歴
昭和21年 5月30日 京都府京都市生まれ
昭和44年 3月 同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒業
同 4月 吉本興業株式会社入社
昭和45年 7月 1年間の劇場勤務を経て、制作部に異動
横山やすし・西川きよしのマネ−ジャ−を8年半
昭和55年 10月 東京事務所開設
平成 1年 7月 本社制作部長に就任