善く戦う者は怒らず

よくたたかうものはいからず・・・・・・
真に優れた戦略家は、一時の怒りにまかせて、戦うようなことはしません。一般的にいってどんなときでも怒って行動すると敗北につながりますから注意したいものです。

 「老子・六十八章」の言葉です。関連あるところを含めて引用してみましょう。
「善く士たる者は武ならず、善く戦う者は怒らず、善く敵に勝つ者は与せず、善く人を用いる者はこれが下となる」とあります。その訳は次のとおりです。

「立派な武士は、強がったり、猛々しくしない。戦うことの上手な人は怒って一時的な感情で行動しない。真に勝つことを知っている人は、争いを起こさない。また、部下を上手に使う人は、下手にでるのがつねで威張ったりしない。

七十二章の中段に、「天の道は争わずして善く勝つ」とあり、ほとんど同じように使われています。
「怒髪冠を衝く」は怒った様子を示します。あまり激しく怒ったために、髪が逆立ち、かぶっていた冠を突き上げたことをいいます。
「目此尽く裂し」は、怒ったあまり目を大きく見開いたために、まなじりが切れてしまったというものです。

ビジネスマンの「耐えられないような怒り」を分類してみましょう。
[対部下]
@指示どおり動かなかったために、損失が発生し、上司である自分にその責任が及んできたとき。
A信頼していた部下に背信行為があり、自分が窮地に陥ってしまったとき。

[対上司]
@自分の能力や識見を理解せず、つねに低い評価が与えられるとき。
A感情の行き違いや誤解があり、ことごとに冷たく処遇されるとき。他のメンバーの面前で罵倒されるとき。

[対顧客]
@大企業や監督官庁などで倣慢無礼な態度で応接される。

以上が代表的なケースでしょう。
老子の教えに従い、上記のようなケースでも、怒らないで対処する方法を冷静にチェックしてみる必要があります。

部下に対して多くの上司は、怒れば直ちに呼びつけて、頭ごなしに、怒鳴りつけるのが普通です。「烈火のように」怒った上司から叱られれば、弁解もできず、ただ恐縮してお説教を聞いて引き下がることになります。

しかし、ほとんどの場合、「面従腹背」の状態で、うわべは詫びていても、心の中では反抗心を高めています。ほんとうに、ビジネス社会で「ともに戦い勝つ」つもりなら、ゆっくり話し合い、少なくとも、相互の誤解を解く必要があります。
人間関係では、相性や好き嫌いなど、理屈ではすまされない部分もあり、時間をかけて、理解し合うより方法がありません。

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