第8回 “ブレストは、コミュニケーション鍛錬場”

通称ブレスト、ブレーンストーミング。いまでは、すっかりお馴染みになりました。ここで、質問です。ブレストって何ですか?さあ、なんと答えますか。
アイディア出し、みんなで話し合う会議、企画書を書く前の準備、意見交換会、などなど。
ま、どれもはずれてはいません。でも、肝心なことが欠落しています。
ブレストのいちばんの利点は、一人では考えもつかないアイディアを生み出す可能性があるということ。つまり、難問に直面したときにこそ、ブレストは真価を発揮するのです。
難問を解決するためには、いままでにない発想が求められる。だから、みんなの知恵が必要になるのです。違う考え方、違う知識、違う経験を持った人が集まって、意見をぶつけ合う。そこから、考えもつかなかったアイディアが生まれる。いってみれば、みんなの脳を箱に入れてシャッフルするようなもの。脳が刺激されて、新しい回路がつながるのです。
ブレストにはこんな素晴らしい特徴があります。しかし、ブレストの良さを引き出しているでしょうか? 研修などで見る限り、正しい使い方をしているとは思えないことが多いようです。なぜでしょう?
それは、会社の会議モードになっているからに他なりません
*上司が言うまでは発言しない
*非常識なことは言えない
*とりあえず、上司には同調する
*変な意見には批判的な態度になる
*しっかり考えてからでないと発言できない
*黙って聞いている
思い当たるでしょう。この会議モードを変えることがいちばんの近道。ブレスとは会議にあらず、発想競争・おしゃべり大会と考えましょう。ブレストには、ルールがあります。
*人の意見を絶対に批判しない
*とにかく思いついたら、すぐに口に出す
*とにかくたくさん数を出す
*他人の意見に触発される
*突飛な意見を歓迎する
*黙っている人に意見を促す
*途中でジャッジしない
守っているでしょうか。多分、途中で性急に答えを求めてしまって、突飛な意見、常識はずれの意見には批判的になっているはずです。これをしていると、役職の上の人の意見、性格の強い人の意見が通ってしまう。つまり、ある個人の思い込みがチームの意見に擦り替わってしまうのです。これではブレストとは言えません。まずは、出されたすべての意見をホワイトボードに書いていく。これが重要。自分の意見がちゃんと書かれたのを見ることで参加意識が高まるのです。人は認められることで、やる気が違ってくる。脳はごほうびに敏感な仕組みを持っています。だから、一度解き放たれるとポンポンとアイディアが出やすくなる、話すことが楽しくなる。黙っていられなくなる。
出尽くしたところで、分類にとりかかる。同じ意味を持つもの同士に分ける作業です。“その真意は何?”ここではじめて、出された意見、アイディアの意味を考えてみる。批判ではなく、お互いに質問を繰り返す。アイディアを出した本人も、答えることで、その意味について自分で気づいていく。ここに、コミュニケーションの本質があります。素直に話し合うことで、相手の本音を引き出すだけでなく、自分の中に眠っていた本音も開示される。これができれば、仕事への共有意識が生まれ、お互いの信頼関係も築かれます。

ブレストには、画期的なアイディアを出すだけでなく、コミュニケーションを作り出すという効果があります。まさに、一石二鳥。
しかし、インチキなブレストを続けていると、かえって特定の人の思い込みを強くするという逆効果。言わない人は、ますます言わない現象を生み出してしまいます。
これでも、言わぬが花、の会議の花を決め込めますか?
詳しくは、拙書「ある日、ボスがガイジンになったら!?」の、オープンの法則の項(1−7)に解説してあります。


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