第9回:規制緩和でお腹がでてくる?
6月でイギリスの大学の多くは終わりです。これから3ヶ月間の夏休みです。学生たちはテストからも解き放たれ、パーティーで連日ビールです。
でも、飲むのはテストが終わった学生ばかりではありません。イギリス人は良く飲みます。気軽にビールが飲めるパブは街中いたるところにあり、週末はどこのパブもビール腹の老若男女で大賑わいです。大学にもパブはあります。ジムはなくともパブはあるのです(本当はすごく貧弱なジムはありますが)。

パブやレストラン以外でも人々は飲んでいます。ロンドンでは、街なかでビールやワインを飲んでいるヒトが多いのです。

天気が良い日にはあちらこちらに座って、飲んでいます。金曜日の夜には、地下鉄やバスには、ビールの缶を持った人がたくさん乗っています。ワインのボトルとワイングラスをもって、テムズ川沿いで飲んでいる人もいます。ビールの種類も豊富で、美味しいビールを外で飲むのはとても気持ち良いです。

これはシカゴから引っ越してきた時にはとても驚きました。シカゴでは、公共の場でアルコールを飲むのは違法です(アメリカではほとんどの州で違法です)。公園でバーベキューをしていても、ビーチで日光浴をしながらでも、飲むのはコーラです。アルコールを公共の場で飲むのは違法なのです。飲めるのは、野外コンサートや野球場など主催者が事前に許可をとってある場合に限ります。もちろん、飲んでいるヒトもいますが、彼らは見るからにアルコール中毒のヒトです。

イギリスでは、会社員の76%が、昼食にリキッドランチ(ランチ+アルコール)をとり、酔っ払った状態で会社に戻ってくるという調査があります。ランチにアルコールを飲むのは、「アルコールを飲まなければリラックスできないから」だといいます。しかも、33%は週に3回以上リキッドランチをとり、76%が酔っ払った状況で会社に帰ってくるのです。本来、リキッドランチは実際は経営にタッチしていない資本家たちのランチで、ワインを飲みながらゆっくりと食事を楽しむものでした。でも、資本家とは到底思えないうらぶれおじさんから普通の会社員までがランチにワインやビールを飲んでいるのです。ロンドンの交通機関が遅れるのも、運転手たちが酔っ払っているからかもしれません。僕の研究が進まないのもアルコールのせいかもしれません。

こんなロンドンですが、アルコールに関して一つの規制がありました。午後11時以降はアルコールの販売は禁止されているのです。パブやバーなどでも11時にはカウンターはしまってしまいます。この規制が、今年の11月にイングランドとウェールズで緩和されます。ライセンス申請を行えば、24時間アルコールを売れるようになったのです。11時に閉店していたパブもバーも、11時以降もオープンです。規制緩和の理由は単純です。11時でアルコール販売が終わるため、11時近くになるとみんな急いで飲むのです。
その結果、12時頃には街中、酔っ払いだらけになるのです。ケンカもありますし、吐いている人もたくさんいます。規制を緩和することで、酔っ払いがあらわれる時間帯を平準化できるというわけです。

24時間アルコールの販売がOKにすると、ますます酔っ払いが増えるだけかもしれません。11時過ぎに酔っ払いが大量発生するのが良いか、一晩中酔っ払いが街を常に徘徊する状況が良いのかも疑問です。この規制緩和の結果がどのようなものになるのかは今から少し楽しみです。人々のウェストが1階級アップすることは間違えないでしょう。僕のお腹だけはビール腹にならないことを願います。


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