第29回:クリック一つで論文ができる・学位もとれる?
ジェームズ・キャメロン(保守党党首)の大麻疑惑にわいているロンドンから、今月も日記をお届けします。
 そろそろ大学はレポートの提出期限が迫ってきたり、テストが近くなってきたり、いろいろあわただしくなってきています。そんな中、最近、イギリスの大学に「Oxbridge Essays (オックスブリッジ・エッセイズ)」というビラが大量に撒かれました。これが大きな問題になっています。
このオックスブリッジ・エッセイズというのは、オックスフォードとケンブリッジの博士課程を終えた学生たちが作った会社で、大学生・大学院生に対して、短いレポートから学位論文までを書いてあげるサービスを提供しています。

 お金をだせば、レポートやら論文を書いてくれるのです。しかも、一度作ったエッセイや論文は他には出さないので完全にオリジナルであることが保証されているらしいのです。学部生用の短いレポートから、マスターの学生の論文、はたまた、博士論文までカバーされています。文字数が指定できるだけでなく、グレードや期日なども指定できるのです。

 学部生の授業のレポート程度だと、10万円ぐらい(480ポンド)で翌日に届けてくれるそうです。安くはありませんね。学部生の卒業論文を15日間で書いてもらうとすると22万円で、最高レベルの博士論文を15日間の期日で書くというのもあるのですが、それだとおよそ500万円かかります。博士論文はかなり高いですね。(それにしても、博士論文が本当に15日間でできるのかということはかなり疑問ですよ。これは。どんなクオリティのものがでてくるのか見てみたいです。)
オックスブリッジ・エッセイズは、「このサービスの主眼はあくまでも、モデルやアイディアの構成などの一例を提供することによって、クライアントのオリジナルなリサーチを助けることです」としています。だから、「学生がここのエッセイや論文をそのまま提出してしまう」ことは想定していないと書いていますが、多くの新聞は、「こんなのは白々しい良い訳」と書いています。このサービスを使うことは、「学問における“売春”だ」などとセンセーショナルな見出しが躍っています。
 大学側は、「ここのサービスを受けたと思われるレポートや論文を提出することは一切禁じられている」としていますが、今のところ、学生が出してきたレポートや論文がこの会社が作ったものなのか、そうでないのかを見分けることはできません。お金さえあれば、学生は一本も自分でレポートや論文を書かずに、卒業できるかもしれないのです。

 今、日本のサラリーマンの平均年収は400万円台だそうです。東証1、2部企業の平均でも605万円だそうです。去年のイギリスの大学の学部新卒の平均年収は400万円でした。LSEの場合だと570万円だそうです。新卒でこれだけもらえるわけですから、日本の大学に行くよりも高いお給料がもらえるということになります。オックスブリッジ・エッセイズを使って、レポートを書いてもらい、とっとと卒業してしまうというのは、かなり効率の良い投資かもしれませんよ。

 今のところ、実際にこのサービスを使ったと思われるレポートや論文が見つかったという問題は起きていないようです。ただ、今後は分かりませんよね。オリジナリティをどうやって担保していくかは結構大きな問題ですよね。
 (オックスブリッジ・エッセイズで、「大学教授用」とかでてきたら楽しいのになって思います。「ノーベル賞級・学会賞級・とりあえずほめられるぐらい・あまり相手にされないレベル」とかで選べたりして。実は学会で発表されている論文のほとんどがすでにオックスブリッジ・エッセイズのものだったりして。)
 
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