#04
The purpose is to provide learners with basic knowledge and
questioning skills. The primary focus is on enhancing the logical thinking powers necessary for developing logical questioning skills.




「人が賢明かどうか、その質問の仕方で分かる」
                         -----ナギブ・マフフーズ

ビジネスに役立つ質問力を学ぶ
  〜経営者に必須の心構えを質問力で考える

 経営コンサルタント・大前研一氏の著書『質問する力』(文藝春秋)を手にして、はっとしたことがある。それはタイトルの英語訳が、「Inquisitive Mind」になっていたからだ。これはとてもいい点をついていると感じた。Inquisitive Mindは「質問する力」と訳してしまうと意味が薄れてしまうのだが、その意味するところは、どんなことにも疑問を持つ心理的態度、というのが近い。これはまさに、ビジネスに必要な心理的態度である。著書自体は質問技法の解説はなく、物事に疑問を持つ心がけの大切さと、その事例研究に紙面が割かれている。
そこで今回は、どんなことにでも疑問を持つ心理的態度になるための質問例を、私の独断で紹介してみようと思う。

1.「問題は何か?」
 この質問は、トラブルに直面しているのだが漠然としていて、どういうことが問題なのか分からない時や、問題がまとまらない時などに使う。「いちいちこういう質問をする必要があるのですか?」と感じてしまう人もいるだろうが、これは自分たちのスタンスを理解する上でとても重要な質問である。特に社員が一丸となって問題に取り組まなければならないような場合、社員の目をひとつに向けるためにぜひとも必要な質問といえる。
社内コミュニケーションを例に考えてみよう。たとえば、総務部の人のミスが多いとしよう。そこで問題を特定する。
「総務部の人」とは誰のことなのか? もし、たった1人の問題なのであれば、「総務部の人間」という必要はない。「〜さんのミスが多い」ということで足りる。総務に属している人たちが全員ミスが多いということが分かってこそ、「総務部の人たちのミスが多い」といえるからだ。
あるいは、「ミス」という指摘が妥当なのかどうかも考えなければならない。ケアレスミスのことなのか、それとも何か意図的な仕業なのか。1日に1回なのか、それとも1日に何度も起きるミスなのか、より特定したいい方が必要になる。
問題を特定する作業は、人が思っている以上に重要である。何となく問題らしきものを感じて適当に扱っているうちは、問題は解決しない。何が問題かを認知してはじめて、それを解決することが可能になるからである。

2.「問題の原因は何か?」
 この質問は、問題を認知した後に使うべき質問である。これはもしかしたら、「1.と同じじゃないですか?」という人がいるかもしれない。ところが、それは早まった反応といえる。問題と問題の原因は、次元が違うのである。
たとえば、「資格試験に落ちた」これが問題だとしよう。すると、準備不足、これがその原因にあたる。「準備不足→試験に落ちた」この流れが分かってはじめて、「次回からは、もっと準備をしよう」ということが可能になる。
別の例で考えてみよう。「資格試験に落ちた」その原因は、当日風邪を引いてしまった。これが原因の場合もある。「風邪を引いた→試験に落ちた」という流れが理解されるから、この人は「次回は、試験前には風邪を引かないように体調管理をしよう」ということになる。

つまり、原因の特定は、その後の結果を大きく左右するのである。ある問題が起こって、それが風邪を引いたからなのか、準備不足だったからなのか、それとも他に理由があったのか、そこが分からなければ、どんなに解決策をうったとしても成功はしない。うまくいくためには、現状の分析をしっかりとすることなのだ。
今回は経営者に必須の心構えをつくる質問を2つ学んだ。1つは、「何が問題なのか?」という質問。この質問で問題の特定をし、自分たちのスタンスを確認する。
もう1つは、「その原因は何か?」ということを考える質問。原因の特定は将来のプランを大きく左右する。問題を起こす原因を特定するための最も大切な作業である。
このような2つの質問を経て、問題を解決する。感覚だけに頼っていては、成長は望めないのである。常に何事も事実ベースで捉えて解決していく。これこそが経営者に必須の心構えなのである。


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