毎月15日発行

17回:アメリカの大学生とビール


アメリカで美味しい料理は限られています。何を食べても同じ味がするダイナーのメニュー。アルデンテなんてどこ吹く風のくたくたのパスタ。美味しいのはハンバーガーぐらいでしょうか。美味しい料理がこんなに少ないのに、なんでこんなに太っている人が多いの?と思うぐらいです。

ただし、ビールはまったく別の話です。日本でおなじみのバドワイザーをはじめ、ミラー、サミュエル・アダムス、シエラ・ネバダ(Sierra NevadaのPale Aleはお勧めです。見つけたらぜひ試してみてください。)、シカゴのワイルド・グースなど上げればきりがないほどたくさんの美味しいビールがあります。種類も、ラガーから、エール、スタウト、などいろいろなものがあるのです。バドワイザーとミラーだけ飲んで、「あー。やっぱり日本のビールのほうが美味しい」と言わないでください。

僕はビールが大好きです。日本ではよく飲みに行きました。居酒屋でガヤガヤです。ただ、アメリカに来てからアルコールを飲む量が減りました。ビールだけが美味しいアメリカで(カリフォルニアのワインもGoodですけど)、ビールの量が減ったのです。



その理由はいくつかあります。まず、アメリカには、日本のような居酒屋はほとんどありません。美味しい料理がたくさんあって、大勢で行って一緒にお酒を飲めるようなところはあまりありません。もちろん、イギリスにあるようなパブやバーなどはよくあります。また、スポーツ・バーなども多いです。シカゴには、ジャズ・バーやブルースを聞けるバーなどもたくさんあります。ジャズ・バーなどはそれはそれで良いのですが、みんなでゆっくり座って飲むという場所ではないのです。大学生や大学院生がじっくり座って飲めるようなところは少ないのです。これは大きな要因です。


また、アメリカの学生はそれほどお金を持っていないということもあります。学生は、日本のようにアルバイトをすることはほとんどないため、遊ぶお金をそれほど持っていません。日本の学生のように飲みに行って1万円、2万円など使ってしまうということはまずありません。100ドル、200ドルはアメリカの大学生にとっては大金なのです。たまに、飲みに行ったとしても、せいぜい1〜2杯です。

アルコールを飲まない学生も結構います。その比率は日本よりも多い気がします。ルームメイトだったガブリエルは4年前にお酒をやめてから一切口にしていません。以前はかなり飲んでいたようですが、今ではまったく飲みません。みんなで飲みに行ったとしても、ペリエやコーラ、ミネラル・ウォーターなどを飲んでいます。また、宗教的な理由から飲まない人もいます。

治安の問題や交通事情もあります。夜にアパートなどで酔っ払って騒いで警察を呼ばれてしまうこともあるようです。警察が来ると罰金です。また、外で酔っ払っていると警察に捕まります。また、酔っ払ってふらふらしていると安全ではないということもあります。うかうか酔っ払えないのです。それに、主な移動手段が車だということもあります。飲んで帰れないのです。

アルコールの役割も大きく違います。日本では、アルコールはコミュニケーションの潤滑油の役割を担っていたりします。お酒を一緒に飲んで、初めて仲良くなる、そこで初めて本音で話す、関係がよくなることは良くあります。いわゆる、ノミニケーションです。もちろん、これは日本に限ったことではありません。アメリカの大学にも多少はあります。例えば、どこのDepartmentもたいていは定期的にビールなどを飲む機会を設けています。学期の終わりや、月の最後の金曜日、あるいは毎週金曜日などその頻度はそれぞれです。ただ、あくまで「たまには、軽く一杯!」というノリです。落ち着いて座って飲むということはなく、立食形式です。ノミニケーションの役割は日本ほど大きくはありません。教授たちも学生を飲みに誘うことはまずありません。日本のようなゼミというものがないので、ゼミで飲みに行くということもありません。先生の家に招待されることはあっても、外にアルコールを飲みに行くということはほとんどありません。ソーシャライズのためにみんなで飲むということはほとんどないのです。



もちろん、真面目な学生ばかりではありませんし、ビールが好きな学生も少なくありません。みんな大学の近くに住んでいるので、「さあ、飲むぞ!」という時もあります。そんな時は、寮やアパートで飲むことが多いです。パーティーの多くは誰かの家で開かれます。ビールやワインを買ってきて家で飲むのです。安上がりですし、くつろげます。盛り上がりすぎて、警察を呼ばれてしまうこともあります。

僕は、家で飲むのも良いのですが、やっぱり日本の居酒屋で大人数で飲むのも大好きです。日本のノミニケーションも結構好きだったりします。なので、アメリカのスタイルはちょっと物足りなかったりすることもあります。また、結婚してから、冷蔵庫のビールとアイスが知らぬ間になくなっている気がします。これも、ビールを飲む量が減っている大きな原因かもしれません。

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