HOME About Me Diary Contact Me Chicago Days London Days
第2回:
小国が担う大きな役割
センター・オブ・エクセレンスはどこだ?
▲オランダといえば、なによりチーズでしょう。
街にはこんな感じのチーズの店があります。マーケットに行っても、やっぱりチーズの店が必ずあります。
美味しいですけど、チーズのお店は結構匂いがきついです。
▲アムステルダムに行ってきました。
運河がたくさんで、街並みもとってもかわいらしいところです。結構、景気はよさそうでした。
 オランダには14の大学があります。この他に、高等教育機関として、およそ50のホーヘスホール(Ho、オランダ語の発音はカタカナでかけないぐらい難しいのです)と呼ばれる専門職業訓練学校があります。人口が1600万人で13校です。日本は1億2千万人でおよそ700校ですから、日本と比べるとかなり少ない割合です。大学への進学率はおよそ20%ぐらいですから、これも日本と比べるとかなり少ないです。
オランダの大学は国立です。学費は安く年間およそ、20万円から50万円ぐらいです。かなりお買い得です。

 学部の授業は当然、オランダ語です。オランダ語は難しいし、オランダでしか通じないので、第二外国語としてオランダ語を勉強している人なんて僕の周りでは聞いたことがありません。なので、学部にはほとんど留学生はいません。大学やプログラムによっても違いますが、修士課程からは英語での授業がほとんどです。英語ができなくてはいけません(オランダ人はほんとにみんな英語が良く出来ます)。留学生はほとんどが修士か博士課程で勉強しています。

 こんなオランダの大学ですが、今、結構がんばっています。というより、ヨーロッパの大学はどこも結構がんばっているのです。どこも、EUのセンター・オブ・エクセレンスになろうとしているのです。
 2000年、EU加盟国は、2010年までにEUを競争力ある知識経済にしようという目標をリスボンで立てました。リスボン戦略と呼ばれています。「ハイテクで先行したアメリカに追いつけ、追い越せ、これからはEUは知識立国だ!」という計画です。この計画に基づいて、EU内の全ての小中学校にインターネットやマルチメディア機器を整備したり、研究者のEU内の移動をより簡単にしたり、企業や大学の共同研究開発を促進したりと、いろいろなことをやっています。リスボン戦略はいまのところあまり成功しているとはいえませんが、ヨーロッパの大学や都市は、知識の集積地、センター・オブ・エクセレンスになろうとがんばっているのです。

そこで注目なのが、“小国”です。EUではさまざまな国の組織が、共同で研究開発をしながら、新しい知識を作っていこうとしています。ここで、大きな役割を果たしていこうとしているのが、“小さな国”なのです。
ヨーロッパの複雑な歴史的な背景から、大型の共同研究開発(コンソーシアム)は、イギリスやフランス、ドイツなどの“大国”ではなかなかやりにくいのです。例えば、共同研究開発の本拠地がイギリスに置かれたとすると、もちろんフランスは参加したがりません。逆も同じです。フランスでのコンソーシアムなんて、聞いただけでもイギリスは参加しないでしょう。そこで、“小さい国”の出番なのです。

例えば、ルクセンブルグ。1人あたりのGDPは世界一で、教育水準は高く、みんなしっかりとした英語を話します。ついでに料理もビールも美味しい。ルクセンブルグがコンソーシアムの主催国として活躍し始めているのです。ルクセンブルグなら、フランス語も英語も通じるし、英仏どちらにとっても、中間地点という感じなのです。ヨーロッパの“小国”がEUの知識のミーティング・ポイントになってきているのです。

 僕はオランダ南部のアイントホーヘンというところにいるのですが、ここも名乗りを上げています。スローガンは、ビート・リスボン(リスボンを越えろ!)ですから。中心的な役割を果たしているのが、フィリップスと大学です。フィリップスはオランダで唯一の国際競争力のあるハイテク企業です。フィリップスのハイテクキャンパスと呼ばれる研究開発の拠点と工科大学を中心に、アイントホーヘン市は企業の研究開発を積極的に誘致しています。料理が美味しくない点は、ルクセンブルグやブリュッセルには負けますが、結構がんばっているようで、ハイテク企業はわりと集まりつつあります。

 EUは巨大な実験です。本当にヨーロッパが知識立国として立ち上がれるのかどうかも分かりませんし、そのなかでどの都市が中心になるのかもまだ不透明です。ロンドンはヨーロッパ唯一の英語ネイティブの大きな都市という大きなアドバンテージがあります。ドイツもハイテクはもともと強い国です。北欧も教育水準が高く、イノベーティブな企業がでてきています。スペインもかなりの勢いで成長しています。まだまだどこがセンター・オブ・エクセレンスになるのか分かりませんが、分からない今が一番エキサイティングです。

株式会社アイ・イーシー東京都千代田区飯田橋4-4-15All Rights Reserved by IEC