採用についてはこの数年かなり変わってきている。何がどう変わったのか。
まずどのような人材を採用するのか、企業はその条件を具体的にイメージし始めた。はっきり言って、それ以前は、こういう発想はあるようでなかった。また企業のイメージ作りも変わってきた。

 90年前後、企業は人手不足と大騒ぎし、今のうちに採用しておかないと、ビジネスチャンスをなくすといって新人の採用はとにかく量の時代だった。その頃、企業の関心はとにかく効率的かつ効果的に、求人媒体を運用することにあった。企業の実情とは似ても似つかない企業広告に巨額の費用を割く企業も後を絶たなかった。ところが、RJP(Realistic Job Preview 職務に関する事前告知)ということがいわれ、ある程度、企業の実情や仕事のイメージを伝えることが必要とされるようになった。それがないと、入職後の幻滅がハードランディングし、モチベーションが下がってしまうと欧米でも通説になっている。これは、ワノウという産業心理学者が指摘したものだ。

 また採用する人材のイメージを明確化するということでは、コンピテンシーなども参考にして、積極性(イニシアティブ)、能動性(バイタリティ)、自律性(インディペンデンシー)、コミュニケーション力などがある人が入社後、活躍するということが指摘されている。ただ、これらの要件は新卒に関する限り、似たようなものになりがちだし、社内の実在者でも持っていない要件をあたら求める傾向も否めない。

 では、どのように新人採用をするのか。入社させれば、それ相応の育成の仕組みもあるはずである。そのことも考慮し、3年ないし5年でどのようにスキルやコンピテンシーが備わっているのかをイメージし、逆算して入社時点でどのような点でどの程度到達していることが好ましいかを具体的にイメージすることだ。その場合、個々のスキルやコンピテンシーが開発可能なものかを考え、開発できない要件を重視すべきである。その上で、そのような到達状態をどのようにして測るかを決めることである。せっかく人材要件を決めながら、第一印象を選んでいては何の意味もないからだ。選考では面接だけではなく、集団討議や各種の適性試験を導入することも必要だろう。


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