困った人にどう対処するか、まさしく管理者の腕の見せ所 !


困った人はどこにでもいます。職場のリーダーである管理者は、このような困った人への対処が重大な役割のひとつです。

困った人を発見し、何が問題なのかを分析し、的確な対応を行っていく、まさしくそれは管理者の腕の見せ所なのです。管理者になった人は一般社員だったときに仕事ができる人だった経験があり、日々の仕事さえうまくやっていれば困った人への対応は二の次と考えることがあります。しかし、日常のことはむしろ部下に任せてすむことも多く、管理者ならではの仕事はそれ以外にあるのです。

欧米の人事評価の事例を見ると、セールスマンの評価はセールスの実績を中心としたものになっています。しかし、セールスマネジャーは部下であるセールスマンの定着や意欲の度合いを中心に評価されているようです。つまり、営業実績ではなく、職場の管理が問われているのです。評価のあり方は会社によってまちまちですが、一般的に実績さえ上げていればその他の問題はあまり重要でないと考えられていないでしょうか?

困った人はそれ自体が確かに問題です。しかし、重要な視点として忘れてはいけないことが職場のあり方自体に問題がないのかということです。


ある流通系の企業があります。その会社は入社した人のかなりの人が離職してしまうので、慢性的に人不足に悩んでいるのです。人がすぐに辞めてしまうので、現場では人が足りず、なかなか休めない人もいます。あるフロアマネジャーは月に1回しか休めないことが続き、ふらふらになっていました。そんな状況でトラブルも多く起こっているのですが、このような場合、単に困った人が多いという見方では不十分です。むしろ会社のほうが困った会社であるという側面も否定できません。しかし、会社のほうにそういう反省をする視点がないせいか、困った人が多い、実力不足の店長が多いと経営者はぼやいていました。これでは問題はいつまでも解決されないでしょう。

また別の会社の話ですが、職場の多くの人がそわそわし、焦燥感ありありのところがありました。そわそわすること、焦燥感を覚えることは神経症の特徴ですが、まさしく職場の雰囲気そのものが神経症傾向にあるのです。会社を離れると普通に戻っていく人がその職場にいるだけで怒りぽく苛立ち、ソワソワとしているのです。これはまさしく職場側の問題といえるでしょう。

また会社そのものの問題とまでいえないにしても、職場の管理者の側に問題があることもあります。最近ではパワハラなど上司による部下に対する精神的暴力が問題にされています。パワハラは極端にしても、上司が良かれと思ってやっていることがちっともよくないこともあるのです。

ある管理者の例ですが、非常に潔癖で厳格な人がいました。この人は銀行員で関連会社に出向していたのです。些細なことでも曲がったことが嫌いで、癇症で部下を怒鳴り散らす人でした。決して私欲で行動することなく、本当に会社のことやそこに働く人のことを親身に考えるほうなのですが、部下の些細なミスも許せないし、一度切れると抑えが利かないのです。その結果、部下として配属されていた人の大半が辞めてしまったのです。本人にはまるで悪意もなく、親身に指導することでその人の成長を願ったということなのですが、2年ほどして見かねた役員の配慮で、部下のない部長になりました。本人にしてみると、不本意で納得がいかなかったようですが、最後まであらたまることはありませんでした。

困った部下を問題にすることはしばしばですが、困った会社もあるわけですし、困った上司もいるわけです。会社や上司の側に何の反省すべきもないと考えることも危険です。困った人とのかかわりをきっかけにして、会社自体、あるいは自分自身のマネジメントのあり方そのものを反省し、軌道修正する視点も忘れてはいけないでしょう。




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