各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
◇第5回のゲストはファーストリテイリング代表取締役会長柳井正氏
(やない ただし)
ファーストリテイリング会長兼CEO
1949年山口県生まれ。71年3月早稲田大学政治経済学部卒業。同4月ジャスコ(現イオン)に入社。72年8月、家業の紳士服店・小郡商事(現ファーストリテイリング)入社。84年6月、カジュアル衣料品店「ユニクロ1号店」を出店、91年から多店舗展開を開始。98年11月、東京・原宿に都心1号店を出店し、成長を加速。2002年11月から現職。
最近ということではなく、ずっと腹が立っているのは、この国に対してである。
この国で、声がでかい人は、税金を払っていない。税金を使っている人の声がでかいのである。税金を「ああ使えこう使え」と原資が無限だと思っているのではないか、と思ってしまう。
 財政は破綻状態だから、今年はおそらくたいへんな年になるのではないのだろうか。そういう状況にもかかわらず、「使え」という人ばかりで「使うな」という人がいないというのはおかしい。

 来年度の予算は減らないうえ、国が潰れそうだというのに新規国債発行が30兆円を越えている。今のような赤字状態では、利子も払えず、国も行き詰まってしまう。
 国家予算も、3年とか10年とかの計画を立てるべきだ。少なくとも税金だけでまかなえる範囲でやっていくべきである。そうしないと消費はますます低迷する。

 日本経団連の会長の奥田さんが、小泉さんも中国の首相朱鎔基さんのように経済改革を断行してほしいと言っていたが、その通りで、口だけでなく実行して欲しい。憎まれ役がいなくなって、みんな「いい子」になっている。「いい子」だけでは世の中、回っていかない。リーダーには特に言えることだ。嫌われてもやってもらわなければダメだと思う。
 朱鎔基さんは、3年で国有企業を民営化させた。小泉さんにも同じくらいの勢いで断行してもらいたいものである。国民の支持もあるわけだから、やるなら今だろう。そうでなければ3年たたずに日本は沈没するに違いない。

 今は、儲かっている企業が少ないから、税収が減っている。その割には使うことが多いし、今の借金を返すために消費税が欧州みたいに30%くらいになる可能性がある。そのうえ円安がすすんで200円、250円になる可能性がある。そうなると、日本はほとんどのものを輸入しているから、現状の半分しか買えなくなり、生活水準がダウンしてしまう。つまり、日本沈没のイメージというのは、ハイパーインフレで、消費税が30%で、行政にはカネがなくて必要な行政ができない、ということだろう。

以前危機があったタイやインドネシア、アルゼンチンと財政状態は変わらないといってよい。一般の国民もそれに巻き込まれるのを避けようと思えば、今、外貨に変えておかなければならないといったことになってしまう。

 とにかく「事業をやっている人や会社」が棲みにくい、仕事をしにくい国になっている。このままではそういう人や企業がどんどん海外に逃げていく。
 国や行政が万能、あらゆることができる、解決してくれると思っている人が多いが、「国に期待する」そういう考え方は辞めにしたい。


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