各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
◇第16回のゲストは株式会社ベクター
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代表取締役社長 梶並伸博(かじなみ のぶひろ)氏

(略歴)
1957年 栃木県宇都宮市生まれ
1975年 栃木県立 宇都宮高等学校 卒業
1980年 東京工業大学 社会工学科 卒業
1980年 栃木県庁入庁 地方公務員上級職(行政)
1981年 日経マグロウヒル社入社(現・日経BP社)調査開発配属パソコン分野のメディア開発に従事。担当開発媒体・日経パソコン ・日経バイト ・日経MIX
1987年 日経マグロウヒル社退社
1989年 有限会社ベクターデザイン設立 取締役社長に就任
1996年 株式会社ベクターに組織変更 代表取締役に就任
変化しないことを是とするものを、基本的に私は好まない。特に、変わるべきなのに変わろうとしないものには、程度の差ことあれ、怒ったり頭にきたりする。代表は、制度や法律、慣習などだが、こういった事には、より憤っている人や詳しい人が多いと思うので、ここでは触れない(下手に書くと馬脚を現しかねないし....)。それ以外となると、最近一番腹が立つのは、自分自身に対してではないかと思う。

 こう書くと、自分に厳しい人間のようで格好いいのだが、実際はそうではない。私は基本的にグータラな人間なので、自分自身に甘い。周りの人にも甘えさせて貰っている。そんな私が、自分の仕事、もしかしたら唯一の仕事だと思っているのは、会社の糠床を引っ掻き回すことだ。一家の主婦が、糠床をかき回し、新しい野菜を放り込むように、会社の糠床が腐らないよう、ビジネスのやり方を変えたり、新しいビジネスを放り込んだりする。それが社長として私の仕事だと思っている。

 従来のやり方を変えたり、新しいビジネスにトライすれば、当然成功することも失敗することもある。失敗した時は、多かれ少なかれ自分に腹をたて後悔するが、しかしそれは避け難いことでもある。しかし、それが安易に過去の習慣を引きずっての場合は、話しは変わる。自分の責任だし、一番腹が立つ。具体例をあげれば、当社が携帯電話分野へ進出した時だ。
 私が代表をしている会社は、パソコン向けのフリーソフトやシェアウェアを集めて公開し、そこに集まって来た人に製品ソフトを紹介販売することを主なビジネスとしている。これがPC分野では成功した。

 携帯電話でJavaアプリが動くようになったとき、同じスキームでビジネスを展開しようとした。しかし、現状は当初の期待とは程遠い。自戒の意味を込めて言うなら、失敗と断ずるべきだ。

 今にして思えば、従来のスキームのまま携帯電話分野に進出した理由は、過去一度成功したものであり、社内外でも理解が得やすかったからに過ぎない。十分な吟味を経ず、安易に変化しないことを是としてしまった結果の失敗である。新しい葡萄酒を古い皮袋に入れる愚を犯してしまったのだ。こういう時は、本当に自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。今後、これを教訓に、今後失敗を減らせればよし。繰り返すようなら、まじめに引退を考えるべきだと思う。


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