各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
◇第24回のゲストは、株式会社学研トイホビー http://www.gakkenth.co.jp/
代表取締役社長
古岡秀樹(ふるおかひでき)氏です。

(略歴)
1958年10月  東京都生まれ
1981年3月  慶応義塾大学商学部卒業
1986年3月  慶応義塾大学商学研究科 博士課程終了
1986年4月  (株)学習研究社 入社
1990年6月   同社   取締役
2003年5月  (株)学研トイホビー代表取締役社長就任
最近「頭にきていること」それは種々あるが、その筆頭は教育問題である。特に子供達の学力低下と公教育の問題を考えたい。

2年前、文部科学省は「ゆとり教育」のお題目のもと、戦後最大のカリキュラム改訂を行い小・中学校の学習内容を約3割削減した。学力低下・落ちこぼれ・学級崩壊・犯罪の低年齢化といったマイナス諸問題の有力な解決策として、学習内容の削減を行い、教育観を「知識教育」から「生きる力教育」へと転換した。

確かに、欧米においても「ゆとり教育」が提唱され、導入された時代もあった。でもそれは70年代後半から80年代初頭のこと。アメリカは1983年レーガン政権の「危機に立つ国家」という報告書を端緒として、「ゆとり教育」と決別をしている。その後はチャーター・スクールの導入や、弾力的な教育予算の運用によって、みごとに教育の再生を果たしている。日本だけが周回遅れで「ゆとり教育」の波に乗ったことになる。国力の指標に「教育力」というものがあるのならば、日本のみが単独で国力の削減をおこない、相対的な地位の低下を招いたことになる。経済界・マスコミ・教育界の反対、そして数多くの保護者からの不安・不満の表明により、本年文部科学省は「ゆとり教育」のカリキュラムは教育の「最低基準」であり、「発展的学習」の導入が望ましいとその方針転換を行った。

ではこれで本当に学力低下問題との決別ができたのだろうか?いや問題の根はもっと深いと思う。今、教育は金融や保険と同様に、自己責任の時代になったと言える。子供の為によい教育環境・教育内容を選択するかどうかは、親の経験と意識・裁量の問題となってきている。
ある統計によると、小・中学生の約25%が全く学習意欲を持っていないという。この子達がこのまま成長してしまうと(そうあって欲しくないと心から願っている)、彼等が社会に出てくる10年・15年後、日本は経済発展の基盤を確保することができるのだろか?今でもフリーター人口は417万人。労働人口の5人に1人がフリーターであるという。またその内の約100万人がニート(NEET)と呼ばれ、「仕事も勉強も訓練もしたくない」層だという。

確かに我々が生きるビジネス社会は、優勝劣敗・適者生存の世界である。企業のパフォーマンス向上は必然だし、短期・中期的にはそれは可能であろう。だが教育問題をこのままにしておいて、日本の国の基盤は大丈夫だろうか?残念ながら政治は今、この教育問題に無関心である。日本が「豊かさに敗れた国」になる前に、我々経済人が教育問題を真剣に考え、その解決策を提唱していくべきではないだろうか?


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