各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
第32回のゲストは、
吉田たかよしさん
東京理科大学客員教授 医学博士

オフィシャル・サイト: http://www.doctor-yoshida.net/
Twitter: http://twitter.com/doctor_yoshida

灘高校・東京大学卒業。東京大学大学院修了後、NHKアナウンサー。医師免許を取得後、元自由民主党幹事長・加藤紘一衆議院議員の公設第一秘書として科学技術政策の立案に取り組む。その後、東京大学大学院・医学博士課程を修了。現在、東京理科大学客員教授、学習カウンセリング協会理事長、本郷赤門前クリニック院長。「月刊ドクター吉田マガジン」を主宰。著書は40冊。
どんな業界にも、タブーがある。
政治家は国民を批判してはいけない・・・。
放送局は視聴者を批判してはいけない・・・。
医者は患者を批判してはいけない・・・。
だが、このリレーコラムは「憤りを感じたこと」がテーマだというので、あえてこのタブーに挑んでみたい。

私は、NHKのアナウンサーを経て医者になった。その間、元自民党幹事長の加藤紘一議員の公設第一秘書を務めたこともある。こうした異なる三つの分野を経験したのは、間違いなく日本で私一人だろう。

その私が、つくづく腹立たしく思うことがある。それは、政治家は国民を顔色ばかり伺い、放送局は視聴者に耳あたりのいいことばかり言い、医者は患者をひたすら甘やかす。それが、日本の政治や報道や医療をダメにしている最大の元凶だ。

福祉は充実してもらいたいが、増税は嫌だ・・・。そんな国民のわがままをきけば、財政赤字が膨らんで立ち行かなくなるのは当たり前だ。にもかかわらず、政治家は有権者に痛みを求めない。

マスメディアも同罪だ。改革には痛みを伴うのが当たり前だが、テレビはその部分ばかりクローズアップして政府を批判する。それを見て視聴者は溜飲を下ろす。だが、結果として必要な改革が先送りされていくこととなる。

医療も例外ではない。眠れなければ「はい!睡眠薬!」、気分が落ち込めば「はい!抗うつ薬!」
すぐに効果が現れるから、確かに患者には心地良い。だが、安易な投薬では、大半が根本的な治療につながらない。運動をさせる、生活リズムを整えさせるといった患者が嫌がる治療には、ついつい二の足を踏んでしまう。

背景にあるのは、馴れ合いだ。
政治家は有権者と馴れ合い、放送局は視聴者と馴れ合い、医者は患者と馴れ合う。
その結果、回りまわって、国民も視聴者も患者も、結局は損をすることになる。

国民を批判する政治家・・・。
視聴者を批判する放送局・・・。
患者を批判する医者・・・。
今、日本社会に求められているのは、そんな人達だと私は確信している。


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