各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
第33回のゲストは、
鈴木高広さん
近畿大学生物理工学部教授 東京理科大学客員教授 農学博士
近畿大学生物理工学部: http://www.waka.kindai.ac.jp/

1959年愛知県三河農家の生まれ。名古屋大学では博士課程までの九年間を授業料全額免除で勉学に励む。学術振興会大学院特別研究員DC2に名古屋大学から初の採用。米国マサチューセッツ工科大学 (MIT)ポスドクを経て、平成元年より通産省工業技術院名古屋工業技術研究所。主任研究官。科学技術庁長期在外研究員として英国ロンドン大学王立医科大学院へ。日米・日英共同研究のリーダーを務め、平成8年より東京理科大学助教授(准教授)。四年後退職し実業界へ。のべ四社で技術経営の実践に学び、ネットで検索される化粧品学者No.1となる。2010年より実学教育の近畿大学教授。ストレスのない安心で豊かな社会を創造する「ふるさとえびすプロジェクト」を構想し研究開発と講演活動、関連省庁や企業などに支援を呼び掛ける。専門はスマートバイオリアクターシステム。MIT時代、大学院生たちが当然のように起業する米国社会に愕然とし、「研究成果で会社を興そう」と東京理科大で学生たちを指導したが果たせず。実践経験のない知識教育は非力だった。十年間の民間行脚は発言の重みと責任、そしてIdentityのため。好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」。人生も未来も紙一重だと思う。
趣味:毎朝の日課となった愛娘との散歩と妻のコーヒーと時事放談。デパート1階売場巡り。うんちくを語る野球。カラオケの演歌。お酒の官能評価。明るい未来をつくる科学。
著書:学術論文97報、その他論文33報、専門書共著12冊、特許出願46件(登録30件)。
受賞:日本生物工学会論文賞、科学技術庁注目発明、トピー工業社新技術金賞など、産官学で実績。
日本の原油輸入量は年2億トン、10兆円の出費だ。CO2排出量は年12億トン。鳩山前首相の30%削減案は幻想だったのか。だが、方法はある。10兆円で‘芋’をつくるのである。芋はCO2を坪あたり米の十倍削減する。石油の代わりに必要な乾燥澱粉は年4億トン。50円/kgで20兆円。農業の全国生産額8兆円をはるかに超える巨大‘芋’市場だ。2億トンの澱粉からアルコール1億kLを製造し、ガソリン軽油の全量を賄う。熔鉱炉のコークスや火力発電用燃料、繊維やプラスチックのポリ乳酸も‘芋’からつくる。化石燃料ゼロ社会と50兆円‘芋’ビジネス、幻想ではない。ふるさとえびすプロジェクトが描く日本の近未来図とは―――。

『高齢農家に年金の十倍の収入をもたらし、新卒学生はお爺ちゃんちに就職。大卒初任給の倍の年収。若き実業家だ。名刺には社長の肩書。結婚も早い。都会でかつての就活勝ち組が疲弊したころ、トレンドの‘芋’実業家にマスコミも注目。子供は三人。‘芋’御殿に三世代仲良く暮らし、お爺ちゃんもお婆ちゃんも孫たちの明るい笑い声と小さな手のぬくもりが、万病を癒す良薬に。遠くの病院に通わなくなったおかげで「極楽、極楽」という。家族といっしょなら老いを怖れることもない。お化粧をして旅行、レジャー、ファッションも。バブル後の失った40年の時を‘芋’マネーが取戻す。小4の長男は、「21世紀の産業革命は‘芋テクノロジー’って、TVのニュースで言ってた。」と、たいそう得意げだ。
内需が拡大しGDPも税収も10%増。「ダムから‘芋’へ」をマニフェストに掲げた新政府は、「ふるさと雇用手当3兆円」を発表。補助金で三人雇いたい。都会の公園から青テントが消え、農協はTPPを支持。アジアの労働者を社宅付きで募る。子供たちは最先端の‘芋テク’を学ぶために近畿大学を目指す。芋畑の真ん中に四階建のビルが三棟建ち、有名学習塾が競う。地価が3倍になったが、農地は相続税免除。人生とは、わからないものだ。』

さて、埼玉県よりも広い40万haの全国休耕地で年4億トン(坪330kg)の芋生産、今は無理だが、たぶんなんとかなる。水も太陽光もCO2も十分ある。半年空地の田は210万ha、貧農の畑も110万ha、工場のない工業団地、草原の埋立て地、鳥しか飛ばない空港もある。土手でも屋上でもベランダでも日本の‘芋’は育つ。1994年、タイ政府機関から名古屋の私にご指名でタピオカアルコール事業への協力要請があった。すると、東京のNEDO本部からもご指名で呼び出され、三人の仏頂面の初対面のお役人に「青二才が、・・」と、半日説教されたことがある。その後の石油高騰とアルコール燃料の普及、中国の猛威、化石燃料と食糧資源の争奪、地球温暖化対策の21世紀へと変貌する世界の動きは、官僚の都合など一切おかまいなしだ。

『連日、大型タンカーが‘芋’を満載し港に着く。砂漠国の遺伝子組換え芋の栽培には、日本のライセンス技術。4億トンの芋栽培に6億トンのCO2と4億トンの水が要る。1バレル100$のニッポンの原水が外貨を稼ぎ、‘芋テク’時代を歴史に刻む。』

――― 明るい未来は、意外と手の届くところにある。


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