各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
第40回のゲストは、黒崎輝男(くろさき てるお)さん

流石創造集団株式会社CEO
1949年東京生まれ。早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。
「IDEE」ファウンダー。“生活の探求”をテーマに幅広くビジネスを展開。2005年流石創造集団株式会社を設立。廃校となった中学校校舎を再生した『世田谷ものづくり学校(IID)』内に、新しい学びの場『スクーリング・パッド』を設立。2009年自由に教え自由に学ぶ「自由大学」を開校。独自の視点で活動を行いデザインの枠を越えた世界観で”場”の状況を数多くプロデュースし続けている。社団法人北陸古民家再生機構、国際連合大学文化顧問などを努める。
best or worst

「もし一軒でも、ものすごく美味しくてユニークなレストランと本屋とファーマーズマーケットがあったら、その廻りには才能溢れる人が集ってきて、その界隈にはクリエイティブな状況ができ、新しい会社が集ってくる」という法則があるという。

たとえば、クリエイティブな都市というと、真っ先にシリコンバレーが思い浮かぶ。
実際、シリコンバレーのあるサンフランシスコのバークレイ界隈には、ユニークでかつ美味しい食事ができる場所や素敵な古本屋、ファーマーズマーケットが揃っており、才能あふれる人がスタンフォード大学に集まり、世界のイノベーションをけん引する企業の多くが、社屋を構えている。

そんな背景もあって、先日、自由大学で行っている創造的都市論という講座で、『BestのレストランとWorstのレストランをあげて、どんな要素が有るかあげて下さい』という課題を出した。

ところが、なかなか面白い答えが出てこない。

自由大学に来ている若者は、企業で活躍している人たちだ。
どうしたら良い結果がでて、どうしたら成功が得られ、何が成功かということを知るために来ている。
そのため、どんなレストランが良くて、どうすれば美味しくなるか、ということは考えられるのだが、Worstについてはあまり考えたことがないようであった。

そこで、ひとまずBestについて考えるのは止めて、Worstとは一体何か? 何を持って最低と思うのか?について考えることとした。
まずは一般的にWorst なレストラン、例えば、生ゴミがいっぱい、サービス最悪、ゴキブリがいっぱい、など、最悪のレストランの例を挙げ、次にその最低さを生かしながら、レストランを成立させることを考える。という風に持って行った。

ここでボクがヤバいなと思ったのは、みんな最悪さのスケールがおとなしく、クリエイティブじゃあないということ。
天才はどこか狂気と変態的なものがあるものだけど、皆、おとなしくて、この期に及んでもどうすれば正解が得られるかを追いかけているのだ。
言ってみれば、遊び心がないのだ。

話は少し飛ぶが、ブラジルにはファベラといわれるスラム街がある。
まるでゴミの山のような貧民窟には沢山の人が集まっていて、そこにはカフェもあり、拾ってきたものをスープにしたりして、コミュニティーが出来ている。親を失った子供や貧乏な人達がたくましく暮らしている。独自のルールで平和が保たれていて、みんなで助け合い生活している。
日本の若者にBest&Worstを考えさせたときに、例えばこんな世界があるということなどは思いもしないで、自分たちの世界観だけでしか考えられない。
そのことが僕にとっては物足りない。きっとタフでたくましい若者もいっぱい居るはずだけど、日本の社会は彼等には正解を与えない。

最近サンフランシスコ界隈には、Facebookの株の上場により何千という若者の億万長者が生まれるようだ。
創業した若者は、始めは金儲けのことなど考えずに、「面白いから」という理由でやり始めたことが社会に影響力を持ち会社として成功した。
きっとそうした若者は、「最悪のレストランもどうしたら楽しむことができるか?」といった問いについて考えることに慣れていることだろう。
それに比べて日本の若者たちが、安全に、確実に成功することに慣れすぎている情況に腹が立つ。

そういえば、パリにファベラシック、というレストランクラブがかっこいいなと思った。貧民街にある最高にお洒落なレストランをイメージして作ってある。ウエイターは踊りながら料理を運んで来る。サービスなんか最低だけど、みんな笑っている。


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