各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
第41回のゲストは、西村琢(にしむら たく)さん

ソウ・エクスペリエンス株式会社代表/CEO
1981年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業。
2005年にソウ・エクスペリエンス株式会社を設立し、体験をギフトとして贈るというユニークなサービスをスタート。カフェチケットが現在、人気を集めている。
http://corporate.sowxp.co.jp/
2012年には仕事旅行社(http://www.shigoto-ryokou.com/)が仲間入り。
2年半ほど前から講師を務めている自由大学の講義「未来の仕事」も人気を博している。
http://www.freedom-univ.com/lecture/detail157.html
会社の仲間Uに驚くべき話を聞いた。平日夜にUが電車を待っていたところ、酔っ払ったおじさんが駅のホームの縁に座っていた。間もなく電車が来る。でも、誰も声をかけない。駅員もいない。電車が近づいてきたらおじさんも気づいてその場を去ると思ったが、去らない。でもやっぱり誰も声をかけない。危ない!慌ててUは緊急停止ボタンを押した。電車はしばらくして急停車した。ギリギリセーフ。Uはドッキドキ。周囲のお客さんは友達同士で「危なかったわね」と完全傍観ムード。

同じような光景に出くわしたことがある。日経新聞の仲良し記者に誘われて五反田のTOCビルに事業仕分けを見に行った帰りだ。建物を出ようとしたその時、斜め向こうのエスカレーターで、人が上から下に転がっていくのが見えた。どうやら下りたいところを誤って上りエスカレーターに足掛けてしまい、つまづいて転がってしまったようだ。少し遠かったのに僕を含めて周囲の皆が気づいたのは、バタンバタンと人が転がる物凄い鈍い音が響いたからだ。

事の深刻さと緊急性を咄嗟に理解してすぐに動き出したのは一緒に会社やっているZ。すぐに駆け出し、血だらけになってる老人を、その場からどかそうとした。僕は、巻き込まれてはいけないとエスカレーターを止める方法を探った。

しかし、他に動く者は多くはなかった。ひとりすぐに救急車を呼んでくれた方がいたが、こんな時こそ真価を問われる警備員も何もできなかった。

咄嗟のアクションを起こせる人が偉いと言いたいわけじゃない。でも多くの人は、与えられた仕事をやること、定められたルールに従う事に慣れ過ぎてやいないか。それが僕の憤りだ。

与えられた問題に答えるだけでは他人の想像の範囲内でしか動けない。他の誰かが規定した、想定内の人生などつまらなくて仕方がないと思うのだが。

地震が多いこの国は少し怖いけれど、社会はもっと積極的に揺さぶっていかなくちゃならない。
正しいかどうか分からなくても、とにかく動いてみること、動かしてみること。内容よりもテンポが大切な時だってきっとある。
(大勢でカラオケに行った時は「私歌えないんですー」ではなくヘタクソでも歌うのが鉄則!)

昔、アメリカのルーズベルト大統領はこう言ったという。
「決断に際して、ベストなのは良い決断をすること、その次は悪い決断をすること、最悪なのは何も動かないこと。」
流石、良いこと言いますね、大統領。

咄嗟に動くこと。
分からなくても歩みを始めること。
正解などないのだから自分の興味の赴くままに流されてみること。

そんな態度が「失われた20年」を「しゃがんでた20年」に変えるのだと思う。


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