村田 真氏
サッポロホールディングス株式会社
人事戦略部 キャリア形成支援室 マネージャー

1968年生まれ
千葉県出身

趣味:水泳、ゴルフ

■人材育成の変革期
サッポロビールでは、2007年度より人事制度を大幅に刷新しました。
それは、サッポログループが現在取り組んでいる「グループ中期経営計画」の根底となっている「攻めの経営への転換」のために、社員一人ひとりの成長を会社が全面的に支援することが必要不可欠であることを再認識したことが背景にあります。
また一方で、これは各企業の共通の課題ではないかと思いますが、2007年問題といわれる団塊の世代の大量退職や、バブル崩壊以降の採用調整などがあり、組織全体としての年齢構成分布がいびつになってしまっていることも大きな原因の一つです。
これまで弊社の人事制度は、職能資格制度、すなわち「役割要件」と「資格」の2つの制度を併用してきました。「資格制度」が先に挙げた年齢構成分布の問題により運用継続が困難になったこと、また、年功色が強くメリハリのついた処遇の実現には至っていませんでした。新人事制度では、社員の「保有能力」による評価ではなく、「適材適所」の人材配置と、その結果(成果)による評価にすることで、社員同士の競争意識を醸成し、相互研鑽を促すこともねらいとしています。

これに伴って社員教育も大きく内容の見直しを行いました。
従来は、「社員の自立、自己責任」に基づいた教育が弊社の基本的なスタンスでした。
社員自身が自ら業務に必要なスキルを高めるために、研修をはじめ通信教育や外部セミナーなど教育施策を選択し自主的に受講することをメインとしていました。
また研修については、指名型での研修は、新入社員研修や新任部支店長研修など数テーマのみで、ほとんどが“手挙げ制”の研修でした。
今回の新しい人事制度では、よりフレキシブルな役割付けが行われることもあり、「社員のキャリア形成」を会社が全面的に支援していくことに方針を転換し、特に階層型の教育研修プログラムの充実を図っています。これは、役割が変わることで求められるスキルだけでなく、役割によって求められるマインドの部分の強化が、サッポログループ全体の組織力を高めていくために必要であると考えたからです。

具体的には、階層型の研修は従来の約3倍に増やし、各階層で求められる役割の明確化、求められるマインドやスキルの向上の機会を、より細かな区切りで行えるようにしました。
例えば、入社5年目の若手社員向けの教育として、ビジネススキルの基礎力強化研修を導入しました。今後マネジメントを担うための素地として、戦略思考、マーケティングの知識、ロジカルシンキング力などは、必須のスキルであると考えたからです。内容としても、アカデミックなものではなく、極力業務に直結するようなものにカスタマイズしています。
それは、若手社員向けの教育で特に留意したことですが、研修で身につけたスキルがすぐに実務で使えるものであったほうが良いからです。もちろん、自ら考えさせ気づきを得られるまで待つことも大切ですが、それ以上に、成果を上げさせるために時間をかけないことのほうが、より若手社員を活性化させるための近道ではないでしょうか。
一方で、ベテラン社員向けの研修では、業務直結の内容だけではなく、研修を通して見識を深めさせ、自ら考えさせることにウエイトを置いた研修にしました。
現在、予定していた約半数の研修を終えて受講者の声を集約していますが、「もっと早く導入してほしかった」「今後も継続して実施してほしい」など、とても前向きな意見が多く、新たな研修を多数企画した立場として正直ほっとしています。

■研修を企画する上でのこだわり
私自身、研修の企画に携わるまで、「もっと自分自身の見聞を広げることができる場がほしい」「サッポロビールの社員であると同時に、人として成長するための『気付き』を得る場がほしい」と考えていました。
そうした思いもあって、社員の満足度・納得度の高い研修を企画していきたいと意識しています。
人事制度を変更して間もないですが、企業としての方針と社員のニーズをすり合わせながらよりよい研修を作っていくことが研修担当としてのこだわり、といったところでしょうか。
また、一方でエンプロイアビリティの向上といった観点からは、「サッポロビールとして優秀な社員の育成」というだけでは不十分であると思っています。
先ほどの「人としての成長」を考えた場合、さまざまな企業の人との交流は大変有効です。
サッポロビールではもともと異業種交流がさかんで、精密機器メーカーや家庭用品メーカー、自動車メーカーなど約10社と連携して、自主的な研修プログラムの企画・運営を行っています。定期的に各メーカーの研修担当が集まるミーティングの場を設け、研修のテーマや進め方も自分たちで決めています。新しい取り組みの意見交換も活発です。
そういった中で、新たな視点を社に持ち帰り、新たな発想で研修をはじめとする社員のキャリア支援策を構築していく今の仕事には、とてもやりがいを感じると同時に楽しさを見出しています。


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