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第19回:月曜日の朝、オフィスに行く前。どうですか?
 大学1年生のゼミを担当しているのですが、学生の1人から「何か面白い本ありますか?時間があるので読みたいのですが・・・」と質問されました。

「大学生の鏡!」なんて想いながら何が良いか考えていたのですが、「古典も読んでほしいし、最新の経営学の本もある。でも、高校を出たばかりの学生だから・・・んー」などと考えると、結構難しいのです。

10分考えて、わりと自信を持って答えたのが、ジョン・ウッドの『マイクロソフトでは出会えなかった天職−僕はこうして社会起業家になった』でした。
ジョン・ウッドは現在、ルーム・トゥ・リードという途上国の教育を向上させるためのNPOをやっています。いわゆる社会起業家である。ルーム・トゥ・リード(Room to Read)という名の通り、図書館や学校を途上国に創っているのです。ジョン・ウッドは、マイクロソフトのマーケティング・ディレクターでした。その彼が、マイクロソフトを辞めて、NPOを設立し、活動を広げていくのです。そこで、どうしてNPOをやることになったのか、そこでの悩みや苦労、楽しみを自分自身で綴ったものが本書です。

 これを勧めた理由はいくつかあるのですが、まず、読んでいて楽しいのです。マイクロソフトで充分大きなサラリーをもらっていた彼が、その安定した職を捨てて(職だけでなくなんと彼女までも)、何のゆかりもないネパールの学校のために本集めに奔走するのです。マイクロソフトにいたならば、サンフランシスコのウォーターフロントに大きな家を建て、ガールフレンドとのリッチな休暇がとれたはずです。その彼が、生涯の賃貸暮らしを覚悟し、移動は常にエコノミー、月末には請求書が払えるかを心配し、40歳の誕生日も1人で迎えるわけです。大きな転換とチャレンジです。なぜわざわざ?と思うわけです。

 その「わざわざ」の理由は、本書を読んでもらうこととして、これを勧めた理由の一番大きなものは、「仕事」について考えるきっかけになるかもしれないと思ったからです。なにより伝えたかったのは(本当に読んでくれるか分からないですが)、「月曜日の朝にベッドから飛び起き、オフィスに行くのがうれしくてたまらない」というジョン・ウッドが得たものです。この本は、NPOをつくったジョン・ウッドのストーリーなのですが、主題は社会起業家にあるわけではありません。「仕事が楽しみになる」ことの意味こそがポイントです。

ワークライフバランスの重要性が叫ばれています。ワークライフバランスのミソは、生産性の向上にあります。生産性を上げられないのに(ワーク・スマートできずに)、ただ働く時間が短くなっては、日本経済は本当にまずい。そして、仕事の効率性を上げるためには、熱いパッションが大切になります。強い動機付けがなければ生産性の高い仕事はなかなかできないのです。

ゴールデン・ウィークが終わって「あー。仕事だぁ〜」と憂鬱になった人、就職活動をしていて「あー。安定した仕事が良いなぁ〜」と思った人、ぜひ『マイクロソフトでは出会えなかった天職−僕はこうして社会起業家になった』を!

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