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第24回:予想以上に早くフラット化する社会
 『フラット化する社会』が出版されたのは2007年でした。著者のトーマス・フリードマンは、2000年代前半の僕らの世界で起きている大きな変化のダイナミクスを分かりやすく描き、ベストセラーとなりました。社会主義体制の事実上の崩壊に端をなす政治的な変化や、情報通信技術の進展を中心とする技術的なイノベーションによって、世界がどんどん小さく、フラットになっていくというストーリーです。

確かに、競争はグローバルになり、企業は最もコスト・パフォーマンスが良い資源を使い、最適地で生産・販売をするようになってきています。ただ、2007年の時点では、まだフラット化に実感はあまりなく、「まだ先の話」という読後感が僕にはあったのですが、これを一変するイベントがありました。

先月、インドの学生と日本企業のマッチングイベントでこの認識が大きく変わったのです。このイベントは、工学系を中心としたインドの大学生や大学院生と、優秀な人材を採りたい日本企業を結びつけるマッチングでした。
▲フラット化する世界
トーマス・フリードマン (著)
日本経済新聞社
このイベントは驚きの連続でした。まず、学生のレベルが高い。インド工科大学など、日本で言えば、東工大にあたるようないわゆるトップ校の学生が参加していたからかもしれませんが、応対もしっかりしています。英語もばっちりです。なにより、彼らのエネルギーはすごい。インターンや就職のチャンスを探しているのですが、チャンスがあれば、本気で日本に来る気なのです。そして、数が多い! とにかく多い!

 市民革命以降、とてもゆっくりではありますが、人間の生まれた場所や、性別、人種などで利益を得たり、不利益を被ったりすることがないように制度がつくられてきました。ただ、その歩みは、とにかく遅い。そのため、『フラット化する社会』を読んだときは、本が指摘するほどのインパクトを想像できなかったのです。

インドの学生を見ていると予想以上にこのフラット化の流れは速いかもしれないと嬉しくなりました。インドで育っても、日本で生まれても、男性でも女性でも、大切なのは、新しいアイディアを考える力やそれをイノベーションへと変えていける能力だけという社会へと近づいてきていることを実感する瞬間だったのです。

企業にとって人材は最も重要な経営資源です。優秀な人材がどれだけ社内にいるかは、企業のパフォーマンスを大きく左右します。国籍にこだわっている企業は長期的には競争力を失います。

また、システムは、あるしきい値を超えると、その変化は加速度的に早まることがあります。もちろん、インドの学生でも優秀な人も、あまり優秀ではない人もいるでしょう。でも、彼ら(少なくともマッチングに参加した学生たち)は、もうReadyです。


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