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連載コラム
第6回:直観力とは? 〜年をとるのも悪くない?〜

前回の「論理思考力」に続いて、今回はそれとセットとなる「直観力」について解説します。これらの2つの力はいわば地頭力の「基本動作」と呼ぶことができます。


「守りの論理」と「攻めの直観」
「論理思考力」とは「当たり前のことを当たり前に説明する」ことで、それだけでは新しいアイデアや個性的な発想というものは出てきません。そこで必要となるのが直観力です。いわば「守りの論理」に対して「攻めの直観」ということもできるでしょう。ここで直観力の特徴を論理思考力との対比で見ていきましょう。
まず、論理というのは「誰がやっても同じアウトプットが出てくる」のに対して、直観というのは「人によって違うアウトプットが出てくる」という違いがあります。つまり直観力の発揮の仕方は百人百様であり、人による「芸風」があるのです。別の見方をすると、論理思考力というのはある程度までの機械化が可能ですが、「直観力」というのは機械化するのが非常に難しい能力といえます。また論理思考力は他人に再現可能ですが、直観力は再現困難ということもいえるでしょう。例えば私自身も日々のコンサルティングの仕事や著作活動の中で「その仮説やフレームワークはどこから出てきたのですか?」という質問を受けることがありますが、これに対しての答えが「そうするとうまくいきそうだと思ったから」という以外に説明のしようがない場合があります。これがまさに直観力によるものだということです。
次に問題解決のプロセスにおける位置づけの違いを見てみましょう。ここでの「問題解決」というのは、売上げ向上やコストダウンといった会社単位のものから、人事部門でいえば採用や教育の計画および実施といった部門単位のもの、あるいは旅行や買い物の計画・実施という個人のものまで広く含めます。こうした問題解決は一般に@広い解の候補から概略の当たりをつけて絞り込む、A絞り込んだ解の候補間の優先順位付けや評価をして最終的な解答を出すという2段階に分けることができるでしょう。これらの@の段階、つまり解を絞り込むのに用いるのが直観力です(Aには主に論理思考力が用いられます)。したがって、直観力を発揮することによって、「しらみつぶしに」時間をかけるのではなく、効率的に解答までたどりつけることができるというわけです。

経験で研ぎ澄まされる「直観力」
では、直観力というのは果たして鍛えることはできるのでしょうか。
そういう直観力はどこから来るかと言えば、やはりそれまでの経験、言い換えれば「成功と失敗の繰り返し」ということができるでしょう。「その道のプロ」というのは必ずその人なりに「あたりをつける」という能力を持っていると思います(前述の「答えの候補を絞り込む力」のことです)。これはそれまでのその道における経験に裏付けられたものになると思います。
一般的に年とともに体力とともに思考力も衰えてくると考えられがちですが、こと「直観力」に関しては経験に依存することから、逆に「年とともにさえてくる」ものと考えられますので、年をとるのもそう悪くないものだということになるでしょうか。
反面で直観力というのは「体系的トレーニング」をするのが極めて難しいところが教育担当泣かせになるでしょう。「直観力養成講座」のようなものを整備することは極めて困難です。理由はこれまで述べたように、属人的で他人に伝えるのが難しいことや長年の実経験が必要となるからです。したがって年月をかけたOJTが一番ということになるでしょう。
次回は「結論から」「全体から」「仮説思考力」について解説します。



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