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新連載第7回
Why型教育とWhat型教育とは正反対 〜Why型の人材は育てられない?〜
前回までWhy型思考とWhat型思考の相違やその基本となるWhyとWhatの違い等について様々な視点から具体例をお話してきました。それらを踏まえていよいよ今回は、「では、企業の人材育成をする上で何に留意すればいいのか?」という、人事・教育担当の皆さんに直接影響するお話をご紹介したいと思います。

Why型教育はWhat型教育と根本的に違う
Why型思考を持った「自ら考える」人材育成の必要性については、既に皆さんは十分に認識済みかと思いますが、改めて本連載での内容も含めて重要性を深められたのではないかと思います。
では、Why型思考を持った人材を育成するにはどうすればよいか? 普通に考えれば、「これからはIFRS知識が必須になるからIFRSのトレーニングコースを追加しよう」とか、「新しいICT知識にキャッチアップするために外部セミナーを受けられるようにしよう」と同様に「Why型思考のトレーニングを開催しよう」という発想になるかも知れませんが、Why型思考というのはそれだけで解決するほど簡単な(他のテーマが簡単だというわけではないですが)ものではありません。
これまでお話してきたように、What型思考とWhy型思考というのは、根本的な発想が180度異なるものであるからです。いわばこれまで信じてきた宗教を「改宗」するぐらいにものの価値観や人材育成に関する考え方を根本的に変える必要があるのです。

What型思考とWhy型思考との根本的な違いとは?
では具体的にその根本的な違いを見て行きましょう。図1を見てください。

これが2つの考え方の根本的な相違を示したものです。従来我が国の学校教育が得意とし、またそれを踏襲する形で企業教育の基本スタイルとなっているのが左側のWhat型教育です。つまり教える側は教わる側との知識差を利用して、足りない知識を伝授していくという、いわばプッシュ型の教育です。つまりこの場合は先生というのは生徒より上に立つ、いわば「偉い」存在である必要があるわけです。
これに対してWhy型の教育というのは、知識を伝授するわけではなく矢印がむしろ逆向きで、相手に考えさせ、相手の意見をひっぱり出すといういわばプル型の発想である必要があります。この場合には必ずしも教える側というのは知識量で勝る(同じ土俵上での)「偉い」存在である必要はなく、むしろ同じレベルに立ってでも引き出すことが上手であることが求められます。
これらを背景として、もう一つ教える側/教わる側の姿勢として決定的に重要なこと、それはWhat型教育で「育てる」対象であった学ぶ側は、Why型教育ではあくまでも「育つ」ものであって、「育てられる」ものではないということです。もちろんWhat型教育であっても自主性は重要ですが、Why型教育では、他人から教わる(教える)という姿勢では絶対に「育つ」ことはないということです。What型人材育成は「他動詞」、Why型人材育成は「自動詞」の違いと言うことができるでしょう。
次回以降にこれらの違いをさらに掘り下げて行きたいと思います。


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