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アナロジー思考・・・・新連載第2回
「似ている」もいろいろ 〜「遠くから借りる」とは?〜
前回はアナロジー思考とは「遠くから借りてくる」ための発想法であることを解説しました。ではその「遠くから借りてくる」とはどういうことかを今回は説明したいと思います。

「遠く」とは見た目でなく「構造」の類似性のこと
アナロジー思考の日本語は「類推」ですから、文字通り「類似しているモノから推し量る」というのが文字通りの意味になります。つまり何らかの形で似ているものか発想するというのが基本的な考え方になります。そう考えるとアナロジー思考とは単に似ているものを真似するだけという印象を持たれるかも知れません。これは半分正しいですが、半分は違います。
アナロジー思考は似たような別の世界で起こっていることから「借りてくる」発想ですから、真似することには間違いありませんが、なるべく普通に気づけない世界、つまり遠いところから借りてくるところに特徴があります。「遠く」ということの意味は、その「似方」つまり類似性が、直接的に見た目が似ているとかではなく、何らかの二つ以上のものの「関係性」が似ていることを示しているということです。ここでは二つ以上のものの関係性を「構造」と呼びますが、「遠くから借りてくる」とは、「構造的類似性」を探してくることを意味します。
古くからある日本語の言葉遊びである「謎掛け」も、全く関係なさそうな二つの世界を結びつける意外性を狙ったものであり、アナロジー思考と類似した点としては結びつける世界が「遠ければ」遠いほど意外性があって斬新で面白くなるという点です。ただ逆にアナロジーとの相違点はその着目している「類似性」です。大抵の謎かけというのは「同音異義語」を探す勝負になり、したがって発想としては「おやじギャグ」に近いのですが、アナロジー思考の場合には、単に音が似ているのではなく、そこに登場する関係者やもの同士の関係や構造といったさらに複雑な類似性を見つけてくることが思考の原点になります。
こういう観点で見た場合に「企業における人材育成活動」に構造的に類似する世界は何かあるでしょうか?競合他社や競合ではなくても似たような業界の企業の事例というのは直接的にすぐに取り入れられる代わりに斬新なものではないはずです。ここから「遠くに」飛ばしていけば、「学校教育」(日本よりは海外の、現在よりは過去といったように地理的にも時間的にも「遠い」もの)や「伝統芸能の徒弟制度」あるいはもしかすると人間ではなく動物の進化の過程や親子のしつけ等ももしかすると参考になるのかも知れません。ここでも何を参考に類似の世界を探すかと言えば、一つ一つのプレイヤーの特徴だけではなく、育っていく対象と周囲との「関係性」ということになります。

アナロジー思考というのは、決して論理的なものの考え方とは言えません。論理的であるというのは、つまり事象同士が「誰が見ても無理なくつながっている」ことをさす訳ですが、アナロジー思考というのはむしろ積極的に発想に「飛躍」を起こすことによって簡単に気づくのが難しいことをアイデアとして抽出するための発想です。
一般的に論理が飛躍するというと否定的な印象の言葉になりますが、アナロジーでは、意図的に飛躍させることを狙います。まさに「不連続な時代」に適した発想と言えるでしょう。
次回以降はアナロジー思考の具体的な適用事例を紹介して行きたいと思います。


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