出る杭は打たれる

でるくいはうたれる・・・・・
人並より一段優れたことを誇示するようなことをすれば、人から疎ましく思われ、敵を多くし、結局は頭を打たれ挫折の道を辿ることになりかねません。なるべく控えめにした方が身のためになります。

  この諺に類似したものがいくつかありますから、それを挙げてみましょう。「高木は風に折られる」「喬木は先に吹かれる」「誉れはそしりの基」などなどです。
いずれも、優れたものが人より頭を出していると、周囲からねたまれ、結局頭を打たれることになるとの教えです。
中国の教えのなかには、さらに憤重なものがあります。宋名臣言行録のなかには、「まさにトウ晦して、圭角を露わす無かるべし」とあります。この言葉は末代の宰相である杜エンという人の言った官僚の心得からとられた言葉です。「トウ晦」は人びとの目を眩ませてしまうこと。またそれから、自分の才能を包み隠して人に見せないようにすることです。「圭角」は、角や、尖ったところですが、性質の円満でなく荒々しいことをいっています。つまり「目立とうとすれば、かえって同僚のねたみや、中傷を受けることになるから、なるべく自分の才を人に知られないようにした方がよい」と教えているのです。

この諺は現代社会にあてはめて考えてみますと、少し消極的な感じにも思えます。かっての中国では政権がかわりやすく、上役にその才を認められることが、却って危険をおかすことになった時代もあり、このような教えが生まれたといえましょう。わが国でも、もちろんこのような傾向が残っていることは事実です。
西欧の社会では、このような考えとは、まったく反対のものがあり「なんとか早く上司の目にとまりたい」といろいろ工夫をするのが一般的です。「努力しないで出世する方法」という有名なミュージカルでは、このことをコミカルに描いています。
まず、社内を自分の名前を連呼して歩き、自分の存在をみんなに知ってもらうようにします。社長の趣味が、毛糸の編み物であると知ると、社長室の前で編み物をしてみせるという具合です。つまり、「努力しないで出世する方法」という表題とはうらはらに、「能力がなくても、なんとか上司に認めてもらうよう努力するサラリーマンの行動を風刺したもの」といえるのです。

わが国の企業風土も現在ではかなり西欧化していますから、ある程度は目立つように気配りし、いろいろ「ごますり的な方法」で上司にアプローチすることも必要でしょう。しかし、注意しなければならないのは、自分の才や、学問の知識を皆の前でひけらかしたり、自己中心の発言を繰り返すことです。

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