兄弟牆に鬩ぐも外其の務を禦ぐ

きょうだいかきにせめげどもそとそのあなどりをふせぐ・・・・・
兄弟であれば、たとえ喧嘩をしていても、それを他人に悟られないようにし、また、外からの敵が攻めてきたときは力を合わせてそれを防ぐようにする……という意味です。

 肉親の和合の道を説いた教えです。「詩経・小雅・常棣編」にみえる言葉です。本文に続いては「良朋ありと毎も、ひさしくして戊くるなし」つまり、「よい友人がいたとしても、いざというときには助けにはこない」と教えています。
血のつながっている兄弟は、普段は仲が悪くても、ことが一家、一族のこととなれば、団結して外敵からの攻撃に対抗できるという意味です。

わが国では、戦国時代にあった毛利元就の三本の矢の訓話が有名です。自分の死期を知った元就は三人の子供達を集めて、まず一本づつの矢をまとめて折らせて、ついで三本の矢をまとめて折らせてみます。三人が協力すれば、外敵がこれを打破ることは極めてむずかしいと諭したのでした。
仇打の話で、曽我五郎・十郎兄弟の話や、義兄弟の荒木又衛門、渡辺数馬が双方の努力を結集して成功した伝承があり、よく知られています。

中国古代の歴史のなかで、仲のよい兄弟といえば「伯夷・叔斉」の話が有名です。これは周の文王の徳を慕う伯夷と叔斉が、武力によって殷を打倒した武王を討つために心を合せて行動をともにしたという話です。

さて、現代版の兄弟愛の美談というとなかなか見開きしないというのが正直な感想です。肉親であるが故に争いが激しく、憎み合いも深刻のようです。この原因について、友人の弁護士の意見によると、戦後の相続税の法定比率が大きく影響しているとのことでした。

戦前の家督相続は嫡男に決っていましたが、戦後の民法改正によって男女平等、均等分割が明記されました。ただし、財産分与については、土地財産などで分割しにくいものもあり、共有の所有となる場合が多く、その後の相続税の支払や、処分にからんで利害が大きく対立するケースが多いとのことです。

知人・友人のケースを開いてみますと、そぞれ難しい問題をかかえており、訴訟問題に持込んでいることも稀ではありません。
しかし、注意したいのは、兄弟の財産上のトラブルがいくら大きくても、解決するまで外部に洩さないように工夫している家族と、赤の他人にまで、身内の悪口をふりまいて、恥を大きく拡げているケースと二つに分かれることです。

このような現実にあてはめてみると、上記の訓示は、平成の時代にも大きく役立つものといえます。
いくら兄弟げんかしても、他人に対して身内の恥は隠しておき、世間からの侮りを受けないようにすることが大切ではないでしょうか。

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