三顧の礼

才能ある人物を得るには、地位の高い人が自ら礼を厚くして、何度も足を運び説得することが必須条件です。組織のトップや人材確保の要職にある者は、千里の道もいとわず、自ら出向く心構えが必要です。

 「三国志」のなかで諸葛孔明の英明を知った劉備がなんども無駄足を運んだうえで、ついに出馬の説得に成功した故事に基づいています。
 劉備がどのようにして孔明の存在を知ったかという経緯も参考になりますので蜀志・諸葛亮伝より前文ストーリーの部分を引用してみましょう。

 劉備は、すでに関羽、張飛、趙雲といった天下の英雄、豪傑を部下としていましたが、知能に優れた人材を熱望していました。そこで諸国を歩いて多数の人材と接触し、人物を見抜くことに秀でた、俗名水鏡、本名を司馬徴、字を徳操という老人に意見を聞いてみました。彼は「まず、現在のような難しい時期には、天下形勢や動向をみきわめるのは、平凡でその辺にうろうろしているような者ではだめです。俗世間に隠れている人材のなかに、龍となり、鳳となる人物がいます」と教えたのでした。劉備は、かさねて、その隠れた人材の名を明すように求めたところ「諸葛孔明と寵士元です」と、2名の名をあげたのでした。

 この逸話のなかの学ぶ点としては、劉備は自分で人材を見抜き、探したりする能力がなくても、人材を見抜く人を信ずる人徳があり、それが、あまたの人材を集め、やがて大国の雄になることができたということです。
 有能な人材を自分の事業のなかに集めることのできる人は、みずからの能力以上の大事業を成功させることができます。

 アメリカのようなトップ・ダウンの経営が主力のお国柄でも、部下の主軸に有能な人材を集めて成功した事例が多く見られます。自分が一人で出来る仕事の内容は限界がありますが、人材をうまく生かすことにより、スケールの大きな仕事ができます。
 そして、トップが人材を見いだし、それを自分の部下にするための方策としては、上記の教訓から
@顔がひろく、世間に明るい人物で、人を見る目を具備している人上を見いだし、その人の意見を信ずること。
Aみずから陣頭に立ち、苦労をいとわず、頭を低くして説得に当たること。
以上の2点を学びたいと思います。

「三顧の礼」のかくれた逸話として、人物の凄さからどうみても劉備より一枚上手の曹操も孔明に自分の部下となるよう使者を出していたということです。
 孔明ほどの明晰で、先見性のある人物であれば、曹操か劉備のどちらが天下を取るか予測できたはずです。このような背景を知れば、スカウト合戦となったとき、オーナーみずからが全面に出て、話し合うなどの積極策がいかに大切か分かると思います。
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