第2回 “聞くか、聴くか”
聞いているようで、聴いていない。ふたつの漢字を見比べてください。聞くには耳、聴くには心がついています。これが、話をきく、の重要なポイント。相手が言っていることを、音声として聞いているか、気持ちまで聴いているか。
話を聞くという、誰でもしている行為が、実はコミュニケーションの分かれ道になっているのです。

Active listeningという英語、聞いたことがあると思います。でも、なんとなく違和感をもつのは、聞くという行為が、積極的であり行動的であるという矛盾した組み合わせだから。しかしこれが、聴く、傾聴するという意味。まさに、心を傾けて聴く。そこには、能動的な聴くという姿勢が間違いなく存在しています。

思い出して見てください、人の話を聞いているとき。
相手の言葉に集中していますか? 相手の表情の変化に気づいていますか? 相手の感情を読み取っていますか?
イエス、と答えられる人は多くないでしょう。
では、なぜ人の話を聞けないのでしょう?その最大の原因は、会話の主語がじぶん、だからなのです。つまり、次は何を話そうかなど、じぶんの話すことばかり考えている、思い当たりませんか?
そういうモードになっていると、次のようなことが起こってしまいます。
* つい、話の腰を折ってしまう
* やたらと、アドバイスしてしまう
* 性急に結論にもっていく
* すぐに否定してしまう
* 知識をひけらかす
* 突然、話題を変えてしまう
などなど。

相手の話を最後までちゃんと聞かないシンドローム。こうなると、相手はすごく不愉快な気分になってしまい、けんか腰になるか、本音を隠してしまいます。これでは、とうてい腹を割ったコミュニケーションなどできるはずもありません。
もし、相手が大事なお得意さんだったら? 気分を害されるだけでなく、重要な情報も教えてはくれないでしょう。
聞かないことは、ビジネス下手。そう思っても差し支えありません。恐いことです。
だったら、どうすれば聴けるか?
* まず、自然な姿勢をとり足や腕を組まない
* あいづちを打つなど、ポジティブなボディランゲージを使う
* 相手の話を鸚鵡返しにする、もしくは言い換えて返す
* 沈黙を恐れず、相手に十分な時間を与える
* いいなと思ったら、共感の言葉を返す
* 性急に判断せず、最後まで聴く
* 相手の感情を直感で感じとる
などなどです。

こうするだけで、相手はじぶんの話をちゃんと聴いてくれていると感じて、予定したこと以上のことを話してくれたりする。そうすると、話している相手が思わぬ気づきを得て、すごい副産物が生まれる、ということも起きたりします。
誰でも経験したことがあると思いますが、じぶんの話を聞いてもらえる、というのはうれしいこと。その人にいい印象をもつし、人間関係も深くなることが多い。さらに、話している相手が気持ちよくなると、当然、聞いている側も楽しい気分になります。この関係が、最高のコミュニケーションを生み出す力になるのです。

聞いているつもりは、コミュニケーションの最大の弱点。聴き下手は、あなたのビジネスの致命傷にもなりかねません。
話すより話させる、話すより聴く。これができてはじめて、コミュニケーションのバッターボックスに立つことができます。
拙書“ ある日、ボスが外人になったら!?”の、ポジティブの法則:Active listeningの項(109ページ)を参照していただくと、さらにご理解していただけると思います。



株式会社アイ・イーシー 東京都千代田区飯田橋4-4-15 Tel 03-3263-4474 All Rights Reserved by IEC