第3回 “YESとNOの間には”

あの世とこの世の間には三途の川。冷静と情熱の間には苦悩。しかし、人と人の間には読み取りにくい空気が流れています。そのせいか、日本人にはYESとNOの間に第3の言語が存在しているようです。
ある人はそれを阿吽の呼吸と言い、またある人は以心伝心と言う。 ある意味、理想のコミュニケーションといえますが、一歩間違えると、思い込みの世界へと向かうことになります。

とりわけ日本のビジネス界には、結論を先送りにしよう、決裂は避けよう、言いにくいことは遠まわしにしよう、というグレーゾーンが存在します。 困ったことに、このグレーゾーンが高度成長とともに、大きく育ってきたようです。
しかし、グローバルな時代に突入して、ガイジンとのビジネスが避けられなくなった今、 このグレーゾーンが大問題をひき起こしています。 もし、取引先のガイジンの質問、提案に対して、YESもNOも言わないとしたら? それは、ガイジンの要求に対して、YESと言ったことと同じになるのです。
あとで、「いや YESとは言わなかった」と弁解しても相手にしてくれません。それどころか、嘘つき、無能と思われること間違いなし。 これが文化なのです。

世界中どこにいっても、コミュニケーションはその国の文化がベースになっています。しかしだからといって、お互いが、リングの上と、土俵の上にいたのでは到底試合になりません。
「ここは日本だから土俵の上でやりたい!」そう思っている人も少なからずいることでしょう。しかし残念ながら、そのような人に明日はないでしょう。 コミュニケーションは、情報と感情を行き来させる行為。自分の場所から出ないのでは、双方向のやりとりはできず、相手の本音を知ることはできません。

思えば、戦国時代の武将も、打って出て、相手の動きを察しながら戦うことで勝利をつかみとってきました。篭城は最後の手段です。
まずは敵の懐に入り込んで、NOならNOと、自分の意思をきっぱり伝える。そうすると、必ず相手はなぜそう思うのかを聞いてきます。そこから、ほんとうの話し合いが始まります。
つまり、YES、NOは単なる意思表明だけに終わるのではなく、そこがスタート地点になるです。あなたというひとりの存在が認められると言い換えてもよいでしょう。
これが、自分を高めるきっかけであり、自信へのプレリュードとなります。コミュニケーションはあなたを間違いなく強くすることでしょう。

この「
YES、NO」は、なにもガイジンとのコミュニケーションに限ったことではありません。ビジネスの場では、はじめての人との交渉は日常茶飯事です。相手の腹を探りすぎて、結局、よい話し合いができないことが往々にしてあります。 そんなときこそ、「YES、NO」が効果的になります。
まず、「
YES」なのか「NO」なのか迫り、なぜそうなのかを質問していきます。さらに質問を重ねていけば、次第にお互いの胸のうちがわかるようになってきます。そのため、単なる情報の交換で終わることなく、感情まで共有できるようになるのです。ただ結論を言うだけで会話が終わるのではなく、次への大事なひと言を引き出すきっかけとなるのです。それによって、コミュニケーションの面白さもわかってくるはずです。

今年、大リーグに渡ったマリナーズの城島選手が、なぜ日本人初のキャッチャーとして成功しているのか。その要因のひとつが、彼のはっきりした物言いにあるといわれています。実は彼はまだそれほど英語は堪能ではないのですが、YESとNOくらいは言えるはずでしょう。

このように、「YES、NO」は、 グローバル時代のコミュニケーションの第1歩です。ぜひトライしてみてください。

(拙書『ある日、ボスがガイジンになったら?!』P30にある4つのルール「AYES、NOをきっぱり言う。すべてはそこから始まる。」に詳しく書いてあります。興味のある方はご覧ください。)

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