第13回:経済学では説明できない味

 先日、スペインに行って来ました。古い街並みも、美術館も、サッカーも良かったのですが、何が一番良かったかといえば、やっぱりスペイン料理でした。パエリヤ、仔豚の丸焼き、リオハのワイン、オリーブ。

 「イタリア、フランス、ベルギー、スペイン。やっぱりヨーロッパには食事がおいしいところがたくさんあるよね!それに比べて、ロンドンは・・・」なんて思って帰ってきたところ、衝撃のニュースが。ロンドンのレストランが今年の「世界のベスト・レストラン」に選ばれたというのです。「ベスト・レストラン50」の中にイギリスのレストランは13軒のランクイン。フランスはわずか8軒(日本はゼロ)。しかも、これは500人以上のシェフと専門家が決めたランキングらしいのです。

 ロンドンのレストランはオシャレです。東京と比べてもロンドンのレストランは断然オシャレでしょう。ただし、外観にだまされてはいけません。美味しくないのです。しかも高い。ロンドンのレストランでの食事はまるで、新宿のパークハイアットのメインダイニングで、一橋大学の学食の定食を食べるようなものです。ロンドンで、評判を調べずにレストランを選ぶことは、美味しくない料理を選ぶこととほぼ同じです。美味しいレストランの分布は極めて小さいのです。

 「ロンドンのレストランは美味しくない」というと、「どうせ、安いところでしか食べてないのだろう」と思われるかもしれません。確かに、ドレスコードがあるような高級レストランには行きません。行きたいのですが行けません。ただし、普段に行くレストランは、最低でも、

テーブルごとにある箸建てに大量の割り箸がささっていない
テーブルには席がちゃんとある
おもちゃがついてくるセットはない
移動式ではない
食券制ではない

といった要件は十分に満たしています。ロンドンでは、これらの要件を満たしていないことが多い中華街や、レバノン料理のスタンド、フィッシュアンドチップスなどでの食事の方が美味しかったりするのです。なぜ「世界のベスト・レストラン」に選ばれ、なぜ「トップ50」に13軒も入ったのかは大きなナゾです。

経済学では、「競争」は良いものとして考えられています。競争は、資源の効率的な再分配をもたらすだけでなく、イノベーションも生み出します。

高級レストランから、揚げ物しかない大衆食堂まで、ロンドンには星の数ほどレストランがあります。競争も激しいでしょう。なのに、なぜこんなに美味しくないのでしょう。ほんとうにナゾは深まります。もしかしたら、レストランが闇カルテルを組んでいるのかもしれません。もしかしたら、イノベーティブ過ぎてイギリス人以外には分からない味になっているのかもしれません。


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