第15回:新しい日本のイメージ
 去年の日記にも書きましたが、ロンドンのクリスマスは派手ではありません。東京のクリスマスの方がよっぽどきれいです。いろいろなところにクリスマスツリーやイルミネーションはありますが、どれも小さく地味です。新年のカウントダウンはまあまあですが、それもシカゴの方がまだ良いぐらいです。クリスマス・シーズンのイベントといえば、クリスマスの翌日から始まるセールとニュー・イヤーのパレードぐらいです。

 こんな年末のロンドンから、今月は日本のイメージについて書きたいと思います。昔から映画やテレビで見るようなエキセントリックでエキゾチックな日本のイメージは相変わらずです。サムライ、ゲイシャ、フジヤマ、スシは今でも日本のアイコンです。和食はとっても一般的です。ただ、かなり現地化されています。カリフォルニア巻きは有名です。シカゴでは、お味噌汁を飲み終わらないと次の料理が来ないレストランもありました。お味噌汁がコース料理のスープのような位置付けだったりするのです。

また、日本にいるとなかなか入ってこない“ニホンジン”のイメージもあります。
相変わらず、日本人は世界で最も野蛮な人種だというイメージがあります。日本に入ってくる時には見事に訳出されていないことが多いですが、映画やテレビでもそれを示唆するセリフは今でも少なくありません。日本でもヒットした「ブリジットジョーンズの日記」でもそんな場面がありました。日本人の定義として、「お腹がすいた時に、自分の子どもを殺す人種」なんて言われたりもします。冗談半分、本気半分です。

最近、このような伝統的な日本のイメージに加えて、3つぐらいの新しい流れがあるようです。一つ目は、マンガです。日本のアニメは大きな人気を得ています。ドラゴンボールやキャプテン翼がテレビでやっていたりします。宮崎駿はこちらでも人気です。ただ、もっとコアなのは、海外にいる日本のアニメ・オタクたちです。大友克弘のAKIRAが火付け役の一つでしょう。日本人でもあまり知らないような日本のサブカル・マンガを読んでいるのです。海外の大学のジャパン・クラブの多くは日本のアニメ好きの集うクラブだったりするのです。ロンドンの日本の書店で、日本人以外からの注文が最も多いのがマンガだそうです。北野武や宮崎駿の映画も人気はありますが、マグニチュードとしてはマンガのほうが強力です。「萌え」な同人誌がロンドンにまで来ているのです。世界のサブカルチャーの発信源です。

2つ目のイメージはファッションです。この前、ラジオを聴いていたら、「トウキョウは、ニューヨーク、パリ、ミラノ、ロンドンに並ぶファッションの中心地!」なんて言っていてビックリしました。銀座や青山に並ぶ高級ブランドのニュースだったわけですが、日本=オシャレ!というイメージはできつつあるようです。オシャレな和食のレストランでのデートはアメリカでもイギリスでも大人気です。日本語のタトゥーを入れるのも流行っています。わけの分からない日本語のタトゥーは良く見かけます。日本で言えば浜崎あゆみといった感じのアイドルのクリスティーナ・アギレラの結婚式のパーティーは“ニホン”風で行われました。ジャパニーズ・スタイルはクール!!なのです。

 最後は、エロです。新聞で日本の性について特集が組まれていたことがありました。ブルセラや援助交際や、日本の性風俗産業の大きさを紹介しているものでした。昔から、ゲイシャ=売春というイメージはあったのですが、最近では、Hentaiはもう一部では通じています。日本人はみんなHentaiで性的に偏った異常性をもっているというイメージです。日本のオジサンたちがアジアの国に集団で売春にいったり、子ども達が下着を売ったりしている姿は思いのほか海外で流れています。大衆紙では、「エロの最先端、ジャパニーズ・スタイルを見よ!」といったような記事をよく見かけます。あまり好ましくないイメージではありますがサブカルチャーとして定着しつつあるようです。
イメージは、ある特定の特徴だけをとりだしてそこが誇張されて出来るものです。イメージは、決して全てを映し出すものではありません。海外で目にする「日本」の多くは、僕たちがイメージする日本ではありません。もちろん、これは日本に限ったものではありません。そもそも僕たち日本人の多くは、トルコ料理とギリシャ料理の区別もろくにつきません。ロンドンと言われて最初に思いつくイメージはパンク・ロックかもしれません。ブルガリアのイメージと言えば、ヨーグルトぐらいでしょう。よく分からないながらも、なんとなくイメージは持っているのです。ただ、そのなんとなくなイメージが強力にこびり付くのです。これらの3つの新しい日本の対する新しいイメージはまだサブカルチャー的なものであります。これらがイメージとして定着していくのかは楽しみです。エロはちょっとやめてほしいですけど。
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