教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

vol.8 残念だった中国の「おもてなし」(ホテル編)

COLUMN

日本のサービス業は何から何まで素晴らしいと感心するばかりですが、アジア圏(特に中国)で揉まれてくると、いっそうその思いが強くなります。日本の場合、5つ星ホテルであろうとビジネスホテルであろうとカプセルホテルであろうと、スタッフのサービスのクオリティにそれほど差は感じられません。それはリーズナブルなカプセルホテルやゲストハウスであっても、スタッフはきちんと敬語を使い、ぞんざいな態度をとらない、いうことです。海外を知らない方は、「そんなことは当たり前でしょう」と思われるかもしれませんが、日本の常識が海外でも常識とは限らないのです。今年5月に北京のホテルでこんな不快な体験をしました。

 

場所は地下鉄6号線の車公庄西駅から近いビジネスホテル。ホテルの相場が高騰している北京にあって、割とお手頃な料金だったのは、やや中心部から外れており、周辺にめぼしい観光地もない地味なエリアのためでしょう。某有名海外ホテル検索サイトで予約しました。

 

午後6時過ぎ、分かりにくい場所にあるホテルにようやく着くと、フロントには見るからにヤル気のなさそうな女性が。

▲見た感じは外国人不可という雰囲気でも、あっさりOKだった山東賓館。いろんなパターンがあるので困惑してしまう

嫌な胸騒ぎを感じつつ、パスポートを差し出したところ、女性はちらとパソコンの画面をみて、ぶっきらぼうに「予約が見つからない」とだけ告げ、すぐにスマホをいじり始めました。この時点でかなり腹が立ったのですが、ぐっと怒りをおさえ、スマホで予約サイト上の情報を提示すると、「予約サイトのことは老板(オーナー)でなければ分からない」と言い張り、まったく取り合ってくれません。そこで「老板はいつ来るのか」と聞くと、面倒臭そうに「まもなく」と答え、また関心はスマホに移りました。

 

その後、待つこと40分。「中国の『まもなく』は、これくらいの感覚なのだ」と理解してはいても、さすがに我慢の限界です。老板の所在を尋ねると、女性はスマホ画面から顔すら上げず、「分からない」の一言。もはや怒りは呆れに変わり、こんな役立たずを相手にしても仕方がないと思い直し、検索サイトのサービスセンターに電話をかけ、中国人男性の担当者に事情を説明したところ、彼は流暢な日本語で丁重にお詫びの言葉を述べ、「このまま泊まりたいですか」と筆者の意思を確認し、「こんなホテルに関わりたくありません」と答えると、即座に無料キャンセルの手続きをしてくれました。

 

彼の要求を受けてフロント女性とかわると、どうやら彼は猛烈に抗議したらしく、女性はぐうの音も出ません。そして、再び筆者とかわると、こちらの心情を慮(おもんばか)ってか「最低のホテルで、最悪のスタッフでした」と吐き捨て、「別のホテルを探すのは大丈夫ですか」と気遣ってくれるなど、十分に誠意が伝わる対応でした。

 

同じ中国人でも、環境が違えば、こうもサービス業としての意識が違うのでしょうか。もちろん、中国でも高級ホテルであれば、料金に見合った洗練されたサービスが受けられますし、逆に安価な民宿やゲストハウスタイプの宿も、外国人観光客慣れしているので、ストレスを感じることはありません。
一番よくないのは、このような外国人の利用が少ない、中級以下のビジネスホテルという気がします。
この手のホテルは、時流に乗り遅れまいと、海外の検索サイトと契約を結んではみたものの、スタッフの末端まで受け入れ態勢が整っていない、ということなのでしょう。
ただ、20年前くらいと比べれば、全体的にサービスは向上していることは事実。今回はたまたま「ハズレ」に当たってしまったのかもしれませんが。

 

中国のホテルについていえば、もうひとつ声を大にして言いたい不満があります。それは外国人が「差別」されているということ。
中国政府は安全面への配慮から、低所得者層の利用が多い「旅館」「旅社」「招待所」などは、外国人の宿泊を認めていません。これは理解できるとしても、本来は無条件で外国人OKなはずの3つ星以上のホテルでさえ、宿泊を拒否されることが少なくないのです。

 

見た目は立派で、フロントの時計には「東京時間」まで掲げられているのに、「外国人は不可」と理不尽な門前払いが続くと、心が折れてしまいます。その点でも、日本はどんな宿にも誰もが自由に泊まれ、トラブルに巻き込まれる可能性も低いのですから、やはりサービス業は超一流だと思います。

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.