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創考喜楽

第7回:仮説思考力とは?
~「ないない病」から脱却せよ~

COLUMN

これまで4-6回では「知的好奇心」「論理思考力」「直観力」という地頭力のベースとなる力についてお話してきました。次にこれから3回にわたって、地頭力の「3つの思考力」について解説していきます。今回は一つ目の「仮説思考力」からはじめましょう。

 

 

「結論から考える」のが仮説思考力

インターネット時代の私達はいま、膨大な情報に囲まれて暮らしています。何か知りたいことがあれば、その言葉を検索のキーワードにして検索エンジンを使えば、あっという間に大量の情報を入手することができます。例えば教育担当者の皆さんが、新しいキーワードについての社員への教育計画を作ろうとする場面を想定しましょう。そのキーワードで検索をかければ何千件というネット上の情報がヒットし、それを読むだけでもあっという間に一日が経ってしまうことでしょう。日常の仕事でもそういう場面はよくあるのではないかと思います。私達は情報がありすぎる分、何も考えずに「ネット検索」にばかり頼り勝ちですが、それでは却って効率が下がってしまうのではないでしょうか。

 

そんなときに重要なのが「仮説思考力」です。仮説思考力とは一言で言うと「結論から考える」ということです。たとえば先の場面では、自分の知らないトピックであっても、あるいは自分の会ったこともない受講者が対象であっても、まず「こんな分野のキーワードだから○○部門の××担当であればこんなニーズがあるのではないか?」とその場で知っている情報や知識だけで考えられる最善の結論(これを「仮説」と呼びます)を考えてみて、その上でネット検索をかけてみるのです。それによって、闇雲に情報を入手することによって情報の大海におぼれることなく、効率的な情報収集ができるようになります。無理にでも先に結論を想定することで、自分はどこがわかっていて、どこがわからないかといったことが明確になり、本当に必要な情報がなにかというアンテナが立ってくるからです。

 

なぜ仮説思考が難しいのか?

「そうは言っても、情報がない状態でどうやって結論を出すのか?」という疑問が聞こえてきそうです。ここで発想の転換が求められます。私達は受験勉強や普段の仕事の中で「100%正しい答えでなければ言っても意味がない」という思い込みにとらわれてしまっています。この考え方でいる限り、ドンピシャリの答えをネットで見つけられなければ永久に情報探しを続けることになってしまいます。ここで考えていただきたいのは、先の教育計画のように全く新しいことを企画する場合にはもともと「100点の正解」などないということです。こういう状況では、「65点」でもいいから(もっといえば20点でも)仮の答えを作って、その状態でさらに必要な情報を集めたり、人に聞いたりしながら精度を上げていくという方法が求められるのです。

 

これと似たような話があります。普段「時間がない」ことを言い訳にして何かをやらない人は、たとえ時間ができても恐らくやりません。「お金がない」ことを言い訳にして何かをしない人はたとえお金が入っても別のことに使ってしまいます。これらはいずれも「優先順位が低い」ことの言い訳を「○○がない」ことのせいにしているだけなのです。これを私は「ないない病」と呼んでいます。本当に時間やお金を有効活用できる人というのは、「いまあるお金と時間で最適のことをするにはどうすればいいか?」というのを考えているので、上のようなことを絶対に言いません(本当に忙しい人が「忙しい」といわないのと同じですね)。

 

ここで「お金」と「時間」を「情報」という言葉に置き換えてみましょう。「情報がないからわからない、決められない」というのは、単にそれを言い訳にしているだけです。「いまある情報で最善の答えを出してみる」という思考回路になることで効率的な情報の使い方ができるようになるのです。
次回は「フレームワーク思考力」についてお話します。

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