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創考喜楽

第10回:Why型思考でゲームのルールを変える
~なぜなぜくんは「戦わずして勝つ」のを目指す~

COLUMN

Why型の人材(なぜなぜくん)とWhat型の人材(そのままくん)の違い、今回ビジネスその他における「競争の仕方」について考えてみたいと思います。

 

「土俵を変える」のがWhy型思考

 

孫子の兵法に「戦わずして勝つ」という有名な言葉がありますが、この言葉の意味を改めて考えてみましょう。ビジネスの世界での他社との競争はよく戦争にたとえられます。実際にビジネスで用いられている手法や理論にも戦争の世界で発達してきたものが数多くあります。そもそも「戦略」という言葉自体が戦いを示すものですが、そこでの戦法・戦術等もオペレーションズリサーチ等、戦争の世界で発達した手法が多くあります。その中の代表例としてよく引用される古典として代表的なのが、冒頭引用した「孫子の兵法」の言葉です。
戦いの仕方もWhat型のそのままくんとWhy型のなぜなぜくんでは大きく異なります。まず与えられたものからスタートするなぜなぜくんは、競合と同じ土俵で戦うことに何の疑問も抱かず、いかにうまく戦って勝つことを考えます。下図を見て下さい。

 

 

What型の戦い、例えば競合他社との製品シェアの奪い合いというのは、競合と同様の商品でガチンコ勝負するという戦いです。これに対してWhy型のアプローチは違います。それは一言で表現すれば、「いかに戦わないようにするか」をまず考えるのです。
例えばいま市場でヒットしている競合他社の製品と同様の製品を後追いで作って同じ土俵に乗り込んで勝負するのではなく(この場合一般的には先手のほうが圧倒的に有利です)、その製品が「なぜ?」ヒットしているかという本質的なユーザニーズを徹底的に分析・抽出し、それを満たすための「別のカテゴリー」の全く新しい製品を開発していわば新しい土俵で一人勝ちすることを目指そうとします。これによって、価格競争などの消耗戦に陥ることなく、別の意味での先行者利益を享受することができるというわけです。

 

ゲームのルールを変える

 

「土俵を変える」というのはどういうことか、さらに別の視点で見てみましょう。スポーツの採点競技等でせっかく日本が強くなって国際大会で上位入賞連発となったのもつかの間、その後の大会から日本人が不利なように競技の採点ルールが変更されてしまうことがあります。これに対して、そうしたやり方で自国に有利なようにルールを変えてしまうのを「汚いやり方だ」と思うのはよくある反応です。
確かにスポーツの世界というのは、決められたルールの中で最善を尽くしてトレーニングに集中して上位を狙うというのは当然あるべき姿勢ですから、この反応は理解できますが、これをビジネスの世界に応用して考えてみましょう。ある程度成熟した製品の販売というのは製品そのもので差別化をするのが極めて難しくなるので、顧客から見ると「どこが違うの?」というような細かい仕様の違いで勝負したり、さらに誰が作っても同じような仕様になってしまう商品、いわゆる「コモディティ」の世界では泥沼の価格競争に入り、新興国にシェアを奪われてしまうというのも、ひとえにこれら新興国と「同じ土俵で」戦うからと言えるでしょう。
こうした場合に求められるのは、競争要因を「価格」以外の要素に変えてしまう、つまり「採点基準」を変えてしまうような商品を市場に出していくことでしょう。英語には「ゲームチェンジャー」(ゲームそのものを変えてしまう人(もの))という表現がありますが、革新的な新商品というのは多かれ少なかれ、この「ゲームチェンジャー」の要素を持ったものばかりです。これがビジネスにおけるWhy型思考の応用である「土俵を変える」ことであるといってよいかと思います。つまりビジネスの世界では、いかに「採点基準を変えてしまうか」というのは、先行者に真っ向から戦いを挑まずに済ませるためにむしろ非常に重要な考え方と言えるでしょう。
「土俵を変えて戦わずして勝つ」というのは、他にも身近に様々な応用が考えられます。
「非効率な会議」は効率化することを考えるのではなく、「そもそもなくせないか」と考える、「やりたくない仕事」は「他の事で代替できないか」と考えるということです。
「・・・そんなに簡単にできないよ」という反応が返って来そうです。確かにすぐにはできないかも知れませんが、長期計画で望めば「土俵を変える」ための第一歩にはすぐにでも必ず取りかかれるはずです。「どうせできるわけないよ」であきらめてはいませんか?
最後にこのことを人事教育担当の皆さんの業務にもあてはめて考えてみてはいかがでしょうか。教育の世界では他社との「競争」というのはあまりないのかも知れませんが、例えば育成方法であれば、いままでの決まったやり方やルールでの「高得点」を狙うという姿勢からやり方そのものを変えてしまおうとか、あるべき人材も単に他社と同じものさし(TOEICとか)で高得点を取れる人を育成するのみならず「ゲームチェンジャー」を育てるという視点で考えてみるというのも面白いのではないかと思います。「グローバル人材」とよく言われますが、単に語学力とか文化的多様性の理解だけでなく「ゲームチェンジャー」であることも必須ではないでしょうか。

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