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創考喜楽

先人の知恵を拝借 故事百選 坂本宇一郎 著

月下氷人

 

月下氷人・・・・・
結婚の仲人のこと。「月下老」と「氷上人」という占いの名人にまつわる逸話をつなげてこの言葉ができました。人生の門出を祝う結婚式によく使われます。

 まず、「月下老」ですが、唐の韋固という人が、宋城という地に旅をしたところ、月の光で読書をしている老人に出合いました。この老人は赤い縄の入った袋を持っていましたので、韋固は何のために持っているのですかと間いました。すると老人は「夫婦となる人の足をつなぐもので、仇でも、他国のものでも、この縄で結び合わせれば結りは不変となるのです」と答えました。

 

 つぎに「氷上人」の方は、晋の時代の故事が出典となっています。昔、索紞という占いの名人がいました。ある日、「氷の上に立って、氷の下にいる人と話をした」という夢を占ってくれないかと頼まれました。索紞は、「水の上は陽、下は陰の卦であり、陽と陰が語るというのは、結婚の仲人を頼まれるという前兆です」と答えました。事実、その依頼人は、太守の息子の仲人を頼まれ、めでたく婚姻が成立したとのことです。いずれにしても、良縁が整って結婚式という一生に一度の盛宴をむかえたとき、その仲立ちをするということは、たいへん栄誉あることです。

 

 人生を幸福にし、豊かにするために、よい結婚をして、よい家庭をつくるということも大きな割合を占めるといっても過言ではないでしょう。生れも育ちもちがい、時には国籍もちがう二人が結婚するということは、不思議な運命を感じます。

 

 さて、月下氷人の役を引き受けた仲人は、結婚式のスピーチをしなければなりませんが、そのとき使う言葉のなかに、「偕老同穴」とか「比翼の烏」「連理の枝」などという難しい熟語がでてくることがあります。

「偕老同穴」とは、夫婦の仲むつまじい幸福な生活をいい、仲人は「このたびめでたく、『偕老同穴の契り』を結ばれまして、まことにご内慶の至でございます」などというように挨拶します。出典は詩経のなかの二つの部分から組立てたものですが、「穴」というのはあまりよい印象を与えませんので、たんに「偕老の契り」ということもあります。この他に「君子偕老」つまり、立派な人格のある夫婦は、「仲良く一緒に暮し老いても共に生きながらえる」という成句もあります。

 

 「比翼の鳥」、「連理の枝」は、唐の白楽天の名詩、「長恨歌」から取られたものです。玄宗皇帝と、楊貴妃のラブロマンスがテーマですが、二人の永遠の誓いの言葉として、「天あっては、願わくば比翼の鳥となり、地にあっては願わくば連理の枝とならん」とあるのです。「おしどり夫婦」のように、いつでも「雌雄二羽ならんで飛ぶ鳥」や、「木目がつながった枝」のように、夫婦仲のよいことを表現します。