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創考喜楽

先人の知恵を拝借 故事百選 坂本宇一郎 著

彼を知り己を知れば百戦殆からず

かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず・・・・・
敵の実力や現状をしっかりと把握し、自分自身のことをよくわきまえて戦えば、なんど戦っても、勝つことができるものです。なにか問題を解決するときも、その内容を吟味し、自分の力量を認識したうえで対処すれば、うまくいくものです。

 「孫子・謀攻編」に見える格言です。その部分を引用してみますと、表題の語句につづいて「彼を知らずして、己を知れば、一たび勝ちて、一たび負く。彼を知らず、己を知らざれば戦うごとに必ず敗る」とあります。
「孫子」の全編を通じて、じつに詳細、綿密に戦略・戦術が論ぜられ、兵法の書としては古今東西にわたって随一と評されています。

 

ナポレオンが「孫子」を座右の書にしたことは有名ですし、第一次欧州大戦後、ドイツの皇帝ウイルへルム二世は、「20年前にこの本(孫子)を読んでいたら、勝敗の結果は変わったかも知れなかった」と語ったと伝えられています。
勝つための作戦が多彩なため、彼の本旨がやや誤解されているところもありますが、勝負の原則が、「敵を知ること」とともに、「味方の内容をよく認識すること」であったことは、たいへん参考になります。

 

情報化時代といわれて久しいものがあり、「敵を知る」ための情報を入手するのにはたいへん便利な時代となりました。入手したい資料はネットやデーターベースのなかに組み込まれていることが多く、いながらにして一通りのものは集められます。

 

注意しなければならないのは、情報が多様化して、本質がつかめないこと、それにマスコミなどによって報道されたものが真実なものとして一人歩きしているということです。「彼を知る」ということは、表面に現れた「通り一遍の情報」でなく、「高度な情報」をいかに多く集めるかということです。
しかし、いくら「精度の高い、価値ある情報」を収集することができても「己を知る」ということができていない場合には、「戦うごとに必ず敗る」という結果に陥りやすいといえます。

 

「己を知る」ということは、容易なようにみえて、なかなか難しいというのが、筆者の実感です。
自己認識の判断の誤りは、過小評価と過大評価の2つの場合があり、両者とも戦う場合のマイナス要素となります。
過小評価の場合は、積極的に、打って出るべき事態に対し慎重になりすぎて、決定や施策がノビノビになってしまうものです。
自己の実力、自社の実力を過大評価するのはもちろん危険です。
権力者や、実力者といわれる人物が陥る最も大きな民は、「己を知る」ことの不足からくるものです。

 

彼を知り己を知れば百戦殆からず