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人材マネジメント編②~4.メンタリング 5.ファシリテーション 6.アクティブ・リスニング

KNOW-HOW

組織の基本となるもの、それは「人」にほかなりません。優れたチームを築くために、組織を活性化させるために、人を活用する術を身に付けることはとても大切なことです。

 

「人材マネジメント」編では、メンバーとの接し方や教育・育成の基本となるスキルを紹介します。良好なコミュニケーションと働きやすい職場をつくるために必要なことを学びましょう。

 

今回は「メンタリング」「ファシリテーション」「アクティブ・リスニング」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

4.メンタリング

メンタリングは助言支援型人材育成の基本となるスキルです。自らが見本となることですすんでもらいたい道を示し、支援することがメンター(メンタリングにおける指導者)の仕事です。

 

コミュニケーションをベースにした新人指導、キャリア開発の方法はいくつかあります。その中で助言支援型といわれるものの代表がメンタリングです。精神的問題をかかえている状態を通常に戻すカウンセリング、一定レベルまで知識を教えるティーチングも、広義ではメンタリングの一種と考えられます。

 

コーチングやブラザー制も助言支援型に含まれますが、コーチングは相手の考えを引き出して自発性を高める点を重視するのに対し、メンタリングは助言という支援行動を大事にします。また、ブラザー制は比較的年齢が近い先輩が指導的役割を担うのに対し、メンタリングは経験豊かな人がメンターとしてその役にあたります。メンターとは導く人、信頼の置けるアドバイザーといった意味です。その主な役割は、相手をやる気にさせることといえます。

 

そのために必要なのは「見せる」ことです。仕事に対する姿勢や成功体験のモデル、人生に対する考え方などを日常の中で見せて、尊敬と共感を覚えてもらうことで行動を促すのがメンタリングの基本姿勢です。

 

その実践には、特別なスキルを備える必要も、育成しようと気負う必要もありません。まずは人の見本になるように、意識して行動すればいいのです。見本になるということは、してほしいことをまず自分がやってみせるということです。人を前向きにさせたいのであれば、自分が前向きな態度を取り、人に話を聞く態度を定着させたいのであれば、まず自分が人の話を聞くようにしましょう。

 

次にやることは、信頼することです。信頼を示すことで相手はリラックスし、自分の可能性を最大限に発揮できるようになります。最後に必要なのは支援する姿勢です。行動の内容はどんなものでも構いません。相手をやる気にさせるために「尽くす」こと、相手を思いやる気持ちを持ち続けることが大事なのです。

 

メンタリングは、相手と信頼関係を築き支援するというスタイルから、人材育成以外の場面にも幅広く活用されています。若年層の職場への定着率改善、男性優位の社会の中で女性が自由に活躍できるようにしようというポジティブ・アクションや、さまざまな人にとって働きやすい環境をつくる取り組みであるダイバーシティの運動などにおいても、リーダーを育成する目的で、広く応用されているのです。日常の中でも親子関係など、メンタリングが必要とされるシーンは数多くあります。

 

■おぼえておきたい関連用語 ダイバーシティ(diversity)
ダイバーシティ(diversity)とは多様性という意味。特に企業におけるマネジメントの領域では「性別、年齢、国籍といった多様な属性や価値・発想を受け容れることで、ビジネス環境の変化に対応し、企業の成長と個人の幸せをめざす戦略」をさす。

 

5.ファシリテーション

 

協働を促すチームマネジメントの手法です。会議やプロジェクトを円滑にすすめるための技法としてとらえられることもありますが、広義にはチームを効率よく運営するためにおこなわれる支援活動全般を意味します。

 

ファシリテーションとは、企業内や学校内、地域のコミュニティなど、組織におけるチームの活性化を促すマネジメント手法です。会議で自発的な発言が増えるように働きかけたり、参加者の認識を確認したりするものでチームの成長を促して、合意と目標達成に導きます。個人よりはチームを対象としたものです。コミュニケーション促進以外にも、プロセスのデザインやルール設定などの検討業務、スケジュール調整といった、メンバーに奉仕するかたちのリーダーシップを含めてファシリテーションということもあります。こうしたファシリテーションをおこなうリーダーをファシリテーターといいます。

 

ファシリテーターが相互理解を深め、チームを活性化するためにおこなうのが「5ステップ」です。これは、チームを成熟させ目標達成に向けて一丸となるために必要な、知的チーム活動の手順をあらわしたものです。

 

5ステップ

  1. 目的共有
    まずチームの結束を高めるために、何が目的なのかを共有する段階です。問題解決プロセスをはじめとするチームの規範とビジョンを作成するのにも適しています。互いにコミュニケーションしやすい雰囲気を醸成する、チームづくりの第一段階です。
  2. 対話促進
    目的達成のためにさまざまなアイデアを出し合う「拡散」の段階です。自由に思いを語り合い、その過程で従来の考え方にとらわれない新しい発想を追求していきます。この段階でのファシリテーターの仕事は、全員がその力を出しきることができる状況を創出することです。
  3. 構造化
    対話促進によって集まった意見やアイデアを論理的にまとめていく「収束」の段階です。議論を通して整理し、論点を絞り込んでいきます。目標達成のためにどうすればいいのかという答えを導き出し、チーム全体に浸透させることが、ここでのファシリテーターの役割です。
  4. 論理検証
    構造化で導き出した答えが正しいかを検証する段階です。自分たちが到達した結論が正しいかどうかを客観的に見直して意思決定に結びつけていきます。ここで(1)での目的共有がしっかりなされていないと簡単に意見がまとまりません。ファシリテーターは議論が堂々巡りにならないよう進行する必要があります。
  5. 成果確認
    論理検証で意見がまとまって結論を全員で共有した後におこなう、次の目標を設定する段階です。準備すべきことや役割分担の確認と、各メンバーがそれぞれどのようなものを得たかを互いにフィードバックし合います。

 

6.アクティブ・リスニング

 

アクティブ・リスニングは傾聴ともいい、相手の話をよりよく聴くための方法です。相手が話しているときに「もっと話したい、もっと聞いてもらいたい」と思わせる、コミュニケーションを活性化させるスキルです。

 

アクティブ・リスニングの基本は、相手のいっていることを一言も聞き逃さないように全身を傾けて、批判せずに最後まで受容するという態度です。

 

話の途中で批判や忠告などを思い浮かべてしまっては、客観的に聴くことができなくなってしまいます。自分の持っている価値観や相手についての情報などは、ひとまずリセットして、賛成や反対といった自分の感情を挟まずに受け容れるようにしましょう。

 

また、表情やジェスチャーといったボディランゲージに注意を払うことも大事ですが、クセや外見にとらわれすぎてはいけません。表面的な特徴に惑わされて、話し手の真意を汲みとることができなくなってしまうからです。さらに、冷静な態度で臨む必要もあります。心を落ち着けなければ、集中して聴くことも相手が発する言葉以外のメッセージに気付くこともできません。

 

アクティブ・リスニングに必要なテクニックを挙げておきます。簡単なテクニックですからできることから実践してみてください。

 

 

■あいづち
あいづちは、相手の話を聴いているというサインです。黙ってうなずくだけでは、サインとして不十分なので、話をさえぎらない程度に「ええ」「はい」「そうですね」といった気持ちのこもったあいづちが必要になります。これによって、相手の話はリズムに乗り、聞いてほしいという欲求が強ければ強いほど、どんどんすすんでいきます。

 

そして、大事なところでは「相手のいっていることをそのまま相手に返す」というかたちであいづちを打つと効果的です。たとえば相手が「大変だった」といったら「大変だったんですね」と返します。しかし、あまりやり過ぎると「聞き流されている」と思われて逆効果になってしまうので、相手の使った言葉で短く明確におこなうことが大切です。このようなあいづちをもらうことで、相手はさらに話がしやすくなります。

 

■質問
もう1つ大事なテクニックとして「質問」があります。相手の話が一段落ついたところで不明点を確認したり、相手が語ったキーワードを使って話を深く掘りさげることで、さらに理解をすすめることができます。このときに詰問するようなトーンになってしまわないよう注意が必要です。「具体的にはどういう意味ですか?」や「この点についてはどう考えますか?」といった表現が適当でしょう。的確な質問は聴いているというサインと認識され、相手にさらなる話す機会を提供するので満足感を高める効果もあります。

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