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リスク・マネジメント編①~1.コーポレート・ガバナンス 2.コンプライアンス 3.CSR(企業の社会的責任)

KNOW-HOW

リスク・マネジメントとは「危機的状況をコントロールする手法」のことです。単にリスクを避けるだけでなく、その実態を把握したうえでの対策と、適切な問題の対処が求められます。リスク・マネジメント編では、企業が持つべき理念や、経営に関わるさまざまなリスクを取り上げ、必要なシステムや対策について、基礎から学んでいきます。

 

今回は「コーポレート・ガバナンス」「コンプライアンス」「CSR(企業の社会的責任)」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

1. コーポレート・ガバナンス

 

コーポレート・ガバナンスとは、「企業統治」と訳されます。会社は誰のためにあるのか、経営のチェックはどうおこなわれるのかなど、健全な企業運営をおこなうためのマネジメント手法です。

 
資本主義社会では、企業といえば株式会社のことをさします。株式会社制度の最大の特徴は、株主が資金を出し合って会社を設立し、会社の経営は専門家である経営者(取締役)に委託すことです。
 
 
このような株式会社制度は長年にわたってうまく機能してきましたが、2001年に起こった米国のエンロン、ワールドコム、タイコといった大企業の不正経理事件が衝撃を与えました。これらの企業では、一部の経営者の会計操作によって利益が水増しされ、法外な役員報酬が支払われた結果、企業は破綻してしまったのです。
 
日本でも、長期間にわたって経営の実権を握る経営者が多く、株主の利益を無視して自分自身の利益を追求してしまう例もありました。ここで関心を集めたのが「コーポレート・ガバナンス」です。コーポレート・ガバナンスは「企業統治」とも呼ばれ、企業の意思決定の主体やそのしくみのことをさします。
 
 
企業は、単に出資者だけのものではありません。確かに経済的な所有権という意味では、企業は株主のものということになりますが、企業価値の共有者という見地に立てば、従業員、経営者、顧客、取引先、債権者など、会社の利害関係者すべてのものなのです。そのどれかに偏ることなく、さまざまな観点からコーポレート・ガバナンスをとらえていく必要があります。
 
 
健全なコーポレート・ガバナンスを構築するポイントは4 つあります。
 
  1. 経営者が強い意志を持つこと
    経営のトップが強い意志を持ち、会社の方向性を定めることが必要なのです。
  2. 透明性のある情報公開をすること
    発表されるIR資料(企業が株主や投資家に対して発表する、投資判断に必要な情報)について、正当で透明性のある情報を開示することが必要です。
  3. 社外取締役や監査役を強化すること
    外部の人材を取締役に任命することで、経営者だけでなく利害関係者の声が企業運営に反映できます。
  4. 業務監督と業務執行者を分けること
    「取締役の指名」「業務の監査」「取締役の報酬決定」という3 つの権限を、社長ではなく経営者以外に持たせ、組織として有効に機能させることができます。
 
コーポレート・ガバナンスをしっかりと徹底することで、健全な企業運営が可能になります。
 
 

おぼえておきたい関連用語  IR(Investor Relation)
企業が株主や投資家に対し、投資判断に必要な情報を適時、公平に提供する活動全般をさす。企業はIR 活動を通じて投資家等と意見交換することで、互いの理解を深め、信頼関係を構築し、正当な評価を得ることができる。

 

2. コンプライアンス

企業が経営活動をおこなううえで、法令や各種規則などのルール、社会的規範などを守ることを、コンプライアンスといいます。企業の信用やブランド力の向上にはコンプライアンスが不可欠です。

 

昨今、企業の不祥事が取りあげられています。産地偽装問題、品質表示の改ざん、粉飾決算、違法人材派遣など、数え切れないほどたくさんあります。

 

これらの不祥事は、各種の法令や守るべきルールを無視し、コストを下げて利益を出そうとして、品質への配慮が欠けてしまい、自分たちの利益や保身のためだけに行動した結果であることも少なくありません。そしてその都度、企業が法律や企業倫理を遵守することの重要性、つまりコンプライアンスの重要性が指摘されてきました。

 

コンプライアンスとは、直訳すると要求や命令に従うことをいい、企業経営においては「法令・規範の遵守」という意味合いを持っています。

 

ただ、コンプライアンスは、単に法律を守ればよいというだけではありません。法令遵守と同時に、倫理観をしっかりと会社に根付かせ、それを周知徹底できる環境をつくることも含まれているのです。では、コンプライアンスを構築するためには、具体的にどんなことをすればよいのでしょうか。

 

最も大切なのは、社員が共通の意識を持つための「マニュアル」の作成です。組織が大きくなればなるほど、トップの意志は末端まで伝わりにくくなります。そこでマニュアルを作成し、研修でしっかりと教育し、周知徹底を図ることで、社員一人ひとりが法令遵守と倫理観を持った行動ができるようにするのです。

 

このように法律や規範を守っていくしくみを取り入れることを「コンプライアンス経営」といい、そのルールは次の4つにまとめられます。

 

  1. 法律、命令など法規範
  2. 社内規程、マニュアル
  3. 企業倫理
  4. 社会貢献

 

コンプライアンスの範囲は、ここからここまでという明確なものはありません。各企業が、法令や社内規程、マニュアル、企業倫理、社会貢献などの範囲で自発的な取り組みとしておこなっているものです。よって各企業での取り組み方も千差万別で、最低限のコンプライアンスを追求する企業から、信用やブランド力を勝ち取るために積極的に取り組む企業など、さまざまです。

 

企業の信用やブランド力の向上には、法令だけに留まらず、企業理念や社会貢献までを範囲とし、これらを基礎に企業文化や社風を改善していくことが必要となるのです。

 

 

 

 

3. CSR(企業の社会的責任)

 

企業は社会的存在であり、ただ営利のみを追求するのではなく、法令遵守や人権擁護、環境保護などさまざまな面で社会的に責任のある行動をすべきであるという理念をCSRといいます。

 

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の頭文字を取ったものです。Corporate は「企業」、Social は「社会的」、Responsibility は、「責任」です。これら3 つで「企業の社会的責任」をあらわします。また、Responsibilityは「責任」の他に「信頼性」という意味もあり、CSR =「企業が社会から信頼を獲得する行動」と、とらえることができます。

 

CSR を重視した経営とは、企業が利益のためだけではなく、社会で必要とされるような活動をし、それを評価されることで企業の継続的な成長をめざすという経営手法です。最近では、株式市場が企業評価の尺度としてCSR の視点を取り入れています。単に自分たちだけが儲かればよいのではなく、利害関係者(ステークホルダー)の利益も考え、社会、環境の面も十分に考慮した経営をおこなうことがポイントです。

 

経済のみでなく、社会、環境という3 つの側面から企業経営にアプローチするという方法は、1997 年にイギリスで提唱された「トリプルボトムライン」の考え方にもとづいています。企業は社会と共に発展していく存在であり、企業が発展をしていくためには、経済面だけではなく、社会や環境的側面にも配慮した事業活動が要求されるのです。

 

では具体的に、どのような経営をすればいいのでしょうか。まず経済的側面においては、利益をあげ、雇用を継続的に確保すること、よい製品・サービスを提供することです。次に環境的側面としては、環境に対する負荷を低減していくことです。そして、社会的側面には、労働・雇用、機会均等、報酬、教育訓練、安全・衛生、地域貢献などへの対応があげられます。

 

社会的責任を果たさず不祥事を起こす企業が相次いだことを背景に、企業をみる社会の評価は厳しくなりました。その結果、企業に求められるものも変わりつつあり、顧客満足を得て、継続的な発展をしていくためには、CSR経営を取り入れる必要があるとの考え方が浸透しました。

 

自分たちができることを明確にし、今後の計画や課題についてはっきりさせることと、現在取り組んでいるCSR 経営が、形式だけの努力ではないと示すことが、社会からの信頼獲得につながります。

 

 

おぼえておきたい関連用語  SRI(Socially Responsible Investment)
社会的責任投資。社会的責任のない企業は、不正をおこなう可能性があるとして社会に貢献している企業にだけ投資するという考え方。

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