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リスク・マネジメント編③~7.個人情報保護 8.ステークホルダー 9.トレーサビリティとHACCP

KNOW-HOW

リスク・マネジメントとは「危機的状況をコントロールする手法」のことです。単にリスクを避けるだけでなく、その実態を把握したうえでの対策と、適切な問題の対処が求められます。リスク・マネジメント編では、企業が持つべき理念や、経営に関わるさまざまなリスクを取り上げ、必要なシステムや対策について、基礎から学んでいきます。

 

今回は「個人情報保護」「ステークホルダー」「トレーサビリティとHACCP」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

7. 個人情報保護

個人情報とは、氏名、生年月日、住所など個人が持つ固有の情報をさします。個人情報の漏えい事件が増えているなか、企業は個人情報を適切に扱い、外部に漏れないようにしなければなりません。

 

近年、情報通信技術が発達し、さまざまな事業者が顧客データなどの個人情報(氏名、生年月日、住所など個人が持つ固有の情報)を所有するようになりました。その情報は適正に利用すれば営業するうえで非常に有用ですが、事業者の管理が不適切な場合には、顧客データが外部に漏えいすることにつながり、個人に対して被害を与える事故が起こっています。

 

また、顧客本人に実害がないとしても、自分の個人情報を誰が保管し、どのように使っているのかわからないため、不安を感じている人も多くなっています。

 

ちなみに個人情報保護に対する不安は、電子商取引への参加の大きな障害ともなっており、インターネットは利用しても、電子商取引は利用しないという例が多くなっています。

 

2005 年4 月1 日に個人情報保護法が全面施行され、事業者は個人情報の適正な取り扱いを求められることとなりました。この法律は、個人情報を取り扱う事業者(5000 名以上の個人情報を保有する)に対して、個人情報の不正な取得や本人の同意を得ずにおこなう第三者への提供の禁止、個人情報の漏えい防止、苦情への迅速な対応が義務付けられています。違反した事業者には勧告がなされ、それでも従わない場合は罰則が適用されます。個人情報保護法への対策は、具体的に次のようなものがあります。

 

  1. 利用目的を限定し、その目的に必要な範囲内でのみ個人情報を取り扱う。
  2. 個人情報は適正な方法で取得し、取得時に本人に対して利用目的を明示する。
  3. 個人データは正確で最新の内容を保つように努める。
  4. 本人の同意を得ずに第三者に個人データを提供しない。

 

こういったことを守らず個人情報を漏えいしてしまった場合、賠償金の負担により経営に大きな打撃を与えるばかりか、企業としての信頼を失うことになります。

 

まずは社員一人ひとりに個人情報の正しい収集や取り扱い方法を認識させ、個人データの開示や利用停止等を求められた際に、適切な対応を取ることができる体制を整えなければなりません。

 

 

おぼえておきたい関連用語 プライバシーマーク制度
この制度は個人情報の取り扱いについて、適切な保護措置を講じる体制を整備している事業者などに対して、評価・認定し、プライバシーマークの使用を許諾する制度。

 

8. ステークホルダー

 

ステークホルダーとは、企業を取り巻く利害関係者のこと。企業はステークホルダーと良好な関係を築き、お互いの利益を実現していかなければいけません。

 

ステークホルダーとは、「利害関係者」という意味を持ち、企業の政策などによって影響を受けたり、逆に影響を与えたりする関係者のことをいいます。具体的には、消費者、株主、従業員のほか、取引先、地域住民、求職者、投資家、金融機関、政府などが含まれます。

 

日本では従業員重視の経営をよしとするソフトマネジメントがみられてきましたが、最近では投資家や株主を重視する経営に転換しつつあります。それは、利益のみを求める経営者中心の企業経営で、事故や不祥事などを起こし、そのために企業が破綻するといったことが起こってきたため、企業のリスクに対するステークホルダーの関心が高まったからです。そこで、株主はもちろんのこと、社会全体の利害関係者、ステークホルダーに配慮した企業経営をする動きになりました。

 

ステークホルダーとの良好な関係を築くには「内部管理」と「外部報告」が重要です。「内部管理」としては、自社の事業活動が社会(ステークホルダー)に与える影響を確認し、現在の取り組み状況を把握したうえで、今後の方針を明確にすることが挙げられます。

 

「外部報告」としては、自社のCSRへの取り組みをステークホルダーに説明し、収集した意見を次に反映するなどの方策があります。ステークホルダーミーティング、インタビュー、懇親会なども、意見交換に有効なツールとなります。

 

企業が活動した結果に出た利益の使い道に関しては、商品の販売価格に反映して消費者に還元する方法や、報酬に上乗せして従業員に還元する方法、配当を増やして株主に還元する方法が考えられます。どのステークスホルダーにどれだけ報酬を還元するかは、その企業の経営方針によります。

 

すべてのステークホルダーの利害は必ずしも一致しないため、企業はステークホルダー間のバランスを取りながら、それぞれの理解を得なければいけません。株主からの目を意識しすぎて利益のみを追求すると、結果的に消費者から不信感を持たれたり、企業価値を損ねてしまうかもしれません。

 

また、利益にはすぐにつながらないように思えても、環境問題への取り組みや社会貢献などがステークホルダーの評価を高め、ひいては企業価値をあげることにつながります。

 

●主なステークホルダー
・株主
・投資家
・消費者
・従業員
・取引先
・取引銀行 など

 

9. トレーサビリティとHACCP

 

製品の取り扱いについて、販売から生産現場までの履歴をさかのぼるしくみのことをトレーサビリティと呼びます。「安全性」にこだわる顧客からの信頼獲得と、企業価値を高めるための手法として重要視されています。

 

トレーサビリティは、Trace(足跡をたどる)とAbility(できること)の合成語で、「追跡可能性」と訳されます。製品の生産から加工・販売までの全工程の履歴を追跡できるようにし、品質・安全管理の徹底、事故や不具合発生時の原因究明などを可能にすることを意味します。トレーサビリティが注目され始めたのは、日本でBSE(狂牛病)に感染した牛が発見され、さらに相次ぐ食品事故や異物混入事件、遺伝子組み換え食品問題、残留農薬問題、食品表示偽装事件などにより、消費者の「食の安全」に対する関心が高まったことからです。

 

クレームによって製品出荷後に不具合が発覚した場合、部品情報や生産履歴、配送履歴などを過去に遡って分析できるのがトレーサビリティの特徴です。また、同じ不具合を持つ製品を特定でき、それをいちはやく告知することができます。つまり、消費者に対して安心を保証することができるのです。

 

トレーサビリティは製品の不具合の対応だけでなく、環境やリサイクルの面でも期待されています。たとえば、製品の部品構成がわかれば、リサイクル時の分別が容易となります。また、出荷後に、環境規制により使用が禁止されている有害化学物質が製品に含まれていることが判明した場合、対象製品をすぐに回収することができます。

 

食品自体の安全性を確保するシステムとしては、HACCP(ハサップ:総合衛生管理製造過程)と呼ばれる食品製造工程の品質管理法があり、日本でも導入されています。HACCP とは、もともと米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の品質管理法です。菌を付けない、発生させない、増やさないために「原材料」「副原材料」「作業工程」の分野で人、機具、設備、温度、湿度、時間など考えられるすべての発生原因を事前に分析し、対策を講じています。

 

HACCP は国際的に高い評価を受けており、効果的に安全性を確保できる方法として認知されています。製品に対する不信感が強まるなか、企業はトレーサビリティやHACCPによって、安全性を確保するとともに、それを消費者に明示し信頼を得る責任があります。

 

●トレーサビリティとHACCPの意義
・流通経路の透明化
・不具合を持つ製品の回収
・消費者への情報提供
・リサイクルの簡易化
・分野ごとの徹底した品質管理

 

おぼえておきたい関連用語 POSシステム
店舗で商品を販売する際のさまざまな情報を記録・活用するシステム。販売した商品名、金額、個数、時間などの情報を記録し、集計結果を在庫管理やマーケティングに活用する。

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