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創考喜楽

2018.05.14
REPORT

21世紀型の組織課題を解決する思考力とは?! ~2018.3.1 地頭力セミナー レビュー~


AIなどのテクノロジーの台頭に伴い、私たちの仕事の多くは、近い将来ロボットに取って代わられると言われています。これからは、知識や情報の所有が大きな価値を持たなくなり、私たち人間には、AIの苦手とする領域「考える力」が求められます。

 

こうした21世紀型の組織課題を考える機会として、「思考力」をテーマとしたセミナーを、ベストセラー書籍『地頭力を鍛える』の著者、細谷功氏を講師に迎え、開催しました。
 

コンビニでは販売されていないもの

「コンビニで販売している商品と、販売されていない商品を、それぞれ各1分間で出来るだけ多く書き出してください。」――冒頭に、細谷氏から参加者に投げかけられた問題です。

 

「販売している商品」は、普段よく行くコンビニや好きな商品を思い浮かべれば、1分間でもたくさん書き出せる傾向にあります。しかし、事実として「販売している」ものであるため、その数は有限であり、発想はいつか必ず底をつきます。

 

対して、「販売されていない商品」は、イメージがしにくく、すぐには書き出せない方もいました。ただ、視点を変えて、棚に収まらないもの(車、飛行機)、目に見えないもの(空気、友情)、そもそも世の中に存在しないもの(どこでもドア、自分の孫の孫)、といった感じで考えれば、その数は無限であり、いくらでも発想が出てきます。

 

発想のプロセスで整理すると、「販売している商品」は、これまでの経験や知識を元にして発想を絞り出す「知識型」であり、「販売されていない商品」は、これまでの知識や経験ではなく、考えることで新たな発想を生み出す「思考型」となります。

 

今回、前者のほうをより多くリストアップする方が9割近くにのぼりましたが、これは1分間という短い時間にも起因するものだそうです。時間が短いと、人は圧倒的に、「知識型」の頭の使い方になります。知識や経験をもとに決まった方法で処理するほうが、新しい方法を考えながら対処していくよりも簡単ですし、断然スピードが速いからです。ただ、定型化できるということは、AIに置き換わる可能性が高いともいえるので、冒頭にあげた組織課題の解決とはなりません。

 

また、環境変化が激しさを増す現在では、過去の知識や経験そのままでは通用しないケースもよく見られます。そうしたなかで、「思考型」の重要性がより高まってきているのです。

 

コンビニのワークでは、『知識は有限、考えることは無限』ということを認識し、また、思考の癖に気づき、場面に応じて使い分けられるようになることの必要を実感していただきました。

 

20点、30点を出すことが重要?!

従来、学校や職場で多数派を占めていた「知識型」の価値観を、私たちは、「思考型」の価値観へと切り替えていく必要があります。

 

その背景のひとつとして、細谷氏は「VUCA」というキーワードをあげました。これは、現在のビジネスシーンを表現した言葉で、「Volatility–変動性、Uncertainty–不確実性、Complexity–複雑性、Ambiguity–曖昧性」を意味します。

 

VUCAの時代では、ビジネスにおける常套手段が通用しなくなるため、仕事のやり方を変えなければなりません。たとえば、顧客に提案する場合。明らかな「正解」がないケースは多く、もし「正解」があったとしても、膨大な情報量を持っているAIには勝てません。

 

そうした状況では、「知識型」の考えで、すぐに「正解」を持っていこうとするのではいけません。「思考型」で、顧客の「問い」を引き出したり、自身から問題提起するなどして、解決の糸口を見つけ、そこから「正解」を生み出していく必要があります。

 

「思考型」へ転換する方法として、細谷氏はスピーディーな試行の実践を訴えました。

 

正解がない状況を前にしたときに、「真っ白だからわからない」と諦めるのではなく、少しずつでいいから「グレー」の状態にする。20点、30点の出来でもいいので、まずは試してみる。試してみれば、間違っている部分もわかるので、正解に近づくことができる。これを繰り返すことで、思考力も磨かれる、ということです。

 

セミナーでは、「知識型」から「思考型」へ転換し、「見えない正解」に近づくための思考法として、ほかにも「フェルミ推定」や「WHY型思考」などの演習を体験していただました。

 

今回のセミナーは、細谷氏の地頭力のコンテンツのほんの一部ではありましたが、講義だけではなく、自身で考えてもらう演習をふんだんに取り入れたので、参加者の方々にとっては、アタマを使ったあっという間の2時間だったようです。

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