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第7回:
ワークシェア
▲スペインのバレンシアに行ってきました。
街の街路樹がオレンジなのです。
しかも3月なのにオレンジがなっているのですよ。
バレンシアはパエリアの発祥の地でもあります。
すっごい美味しい街です。
▲同僚のアレサンドロです。
サッカーファンのミランっ子です。
熱狂的なインテルのファンで、ACミランを悪の帝国だと言ってはばかりません。
 去年から、オランダの大学で働いているのですが、日本の大学と比べると多くのスタッフがいます。僕のテクノロジー・マネジメント部門の秘書課の人だけでも30人もいるのです。スタッフはアルバイトではありません。“正規”雇用です。ただし、彼らの多くはフルタイムで働いているわけではないのです。いわゆるワークシェアです。

たとえば、秘書のマリアンナは月曜日と火曜日はお休みで、水曜日と木曜日、そして金曜日の午前中だけオフィスで仕事をします。また、レティは月曜日から金曜日まで、10時から3時までの仕事です。

 日本では、正規雇用といったら、普通は9時〜5時の勤務ですよね。それにサービス残業がつき物になってくるわけです。それ以外は、非正規雇用のアルバイトです。オランダでは、正規雇用でもいろいろと働き方が選べるのです。午前中は家のことをやる時間に当てて、午後から出てくる人や、金曜日は休みにして、長めの週末をとったりもできるのです。

 日本にいるころから、このワークシェアは知ってはいたのですが、わりと懐疑的でした。「仕事って、そんなに細切れにできるの?」とか「そんな短い時間で、ちゃんと仕事できるの?」とか思っていたのです。日本では、どうしても、「そんな中途半端な時間しかいない人は使えない」とかいう意見がでてきがちです。僕もそれと大差ない考え方でした。

それが実際に、こっちに来て働いてみると、結構良いのです。仕事を頼む人っていうのは、決まってきますよね。旅費の清算ならレティとか。授業の準備関係だとマリアンナとか。それで、レティが3時に帰っちゃうことを知っていれば、書類をそれまでに用意して持っていくわけです。「いつでも居る」と思うと「まあ、後ででいいか」となってしまいます。結局オセオセになっちゃったりするのです。でも「この時間しかいない」と思うと、きちんと準備するのです。むしろ、効率的になる側面もあったりします。ワークシェアをしている人たちも、働く時間が限られていますから、まあ、残業すれば良いかなんて考えません。やらないといけない仕事は決まっていますから、どうにか自分の時間内でやろうとします。

 また、何より良いのが優秀な人を雇えるのです。特に、女性。僕の周りにも優秀な女性がたくさんいます。優秀であっても、理由があって、毎日9時〜5時までは働けないという人は少なくありません。子どもの学校の送り迎えがあるかもしれません。年老いた両親の介護もあったりします。メタボの旦那の世話もやけるでしょう。そんな人たちを活用できるのです。フルタイムで働く時間はあるけれど、ちっとも優秀じゃない人を雇っておくよりも、優秀な人には、ちゃんとポストをあげて、働いてもらったほうが効率的です。優秀な人材を埋めておくのは、社会的にもとってももったいないことなのです。

 このワークシェアが1970年代後半から80年代初頭のオランダ病といわれた不況から脱する1つのカギだったと言われることもあります。まあ、一国のマクロ経済の浮沈にはいろいろな要因が複雑に絡んでいますから、このワークシェアによってオランダ病は克服されたと結論付けるのはちょっと無理があるでしょう。

 また、どんな職場でもワークシェアが上手くいくわけでもありません。ずっと長い時間同じことをやることによってのみ熟練の技術が形成される職場はあるでしょう。また、「いつでも同じ人がいてくれる」という安心感が必要な場面もあるでしょう。そういうところは、フルタイムで人を雇えばよいわけで、実際にオランダでもそうなっています。

ただ、ワークシェアできるところは、結構多いんじゃないかなって思います。まわりのオランダ人に聞いても、いろいろなライフスタイルが選べるようになったし、優秀な人材を活用できるようになったのだから、結構良いじゃんというのが感想のようです。


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