◆法輪功と天安門事件

五輪開催、世界貿易機関(WTO)加盟と、国際社会における中国の存在感がこれまで以上にクロースアップされるなか、いまだ欧米諸国からの不信を拭い切れていない最大の問題が「人権問題」です。

古くは歴代皇帝による暴政、最近では毛沢東崇拝を強い多数の犠牲者を出した文革の例を見ても分かるように、歴史的に鑑みて中国が人権意識の育つ土壌を持たない国であったことは否定できません。

その最たる出来事が、全世界を震撼させた1989年6月4日の「天安門事件」でしょう。騒動の発端は、民主化運動に肯定的だったリベラルな指導者・胡耀邦の訃報に際し、学生・知識人が開いた追悼集会でした。

集会はやがて1987年の党政治局拡大会議で失脚した胡の名誉回復要求に発展、さらに具体的な民主化要求へと拡がりを見せたため、これを反政府運動と断罪したケ小平が武力弾圧を指示。人民のために在るべき人民解放軍が徒手空拳の学生らに発砲するという文革時ですらなかった阿鼻叫喚の地獄絵図となり、一説では2000人ともいわれる民衆が凶弾に斃れる悲劇となったのです。

以後、中国は国際社会から「人権抑圧国家」のレッテルを貼られることになりました。そして、その批判は今、当局による気功集団「法輪功」への弾圧に向けられています。

現在は米国に拠点を置く李洪志氏率いる「法輪功」を、当局は人心を惑わす「邪教」と断定。投獄、拷問も辞さない苛烈な取り締まりを続けています。

不透明な新興宗教的要素を多分に含むとはいえ、オウムのような犯罪集団ではない「法輪功」を、当局がこれほどまでに警戒するのはなぜでしょうか。それは天安門に集まった民衆同様、現体制の根幹を脅かすに十分なパワーを秘めていると認識しているからに他なりません。

こうした弾圧に対し、一部メンバーが焼身自殺で抗議するなど、対立は泥沼化の様相に。「法輪功」は、「人権改善」と「体制維持」の挟間で揺れる中国のアキレス腱といえるでしょう。

弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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