13億人はヒトそれぞれなれど、興味が尽きない中国人。もっとよく理解するための連載講座
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第9回 仲良くなったら、とことん情が深い中国人
 「関係(グアンシ)」という中国語があります。その意味は奥が深く、一般的な「関係」にとどまらず、むしろ「人脈」「コネ」といったニュアンスでよく使われています。「カネよりコネ」といわれるのが中国社会。ビジネスもプライベートも、「関係」なしには絶対にうまくいきません。
 いったん良好な「関係」を築けば、一気に距離を縮め、とことん尽くしてくれるのが中国人。僕も約2年間に及んだ湖南省長沙市での生活のなかで、「関係」の大切さ、ありがたさを何度も体験しました。
 当時、知人が経営する日本語学校で働いていた僕は、主に教え子や同僚と素晴らしい「関係」を築き、充実した日々を過ごしました。中国事情に明るかったこと、下手くそなりに中国語が話せたこと、努めて謙虚な気持ちで現地の人と接したこと――が大きかったように思います。
日本語学校の教え子です。
F先生と娘さん。週に1度家庭教師をしていました。

 左の懐かしい写真(1998年)に映っている少女は、日本語学校の教え子です。よく「遊びに行きましょう」と声をかけてくれ、あちこちを案内してもらいました。夏休みには、Kさん(写真右)の里帰りに図々しくも同行し、実家にお邪魔したことも。突然の訪問だったにもかかわらず、彼女の家族は大いに歓待してくれ、深夜までカラオケで盛り上がりました。「早く結婚したほうがいい」と、いきなり親戚の女性まで紹介されたのには困ってしまいましたが(笑)
 その後、日本で就職したKさんとは、現在も交流が続いています。昔と変わらず「内海先生」と呼ばれるのは、ちょっと照れ臭いものの、長沙時代にタイムスリップしたようで、悪い気分ではありません。たまに会うと、「まだ結婚していないのですか!頑張ってください」と叱咤激励されています。

 もう1枚の写真にも、忘れ得ぬ思い出が詰まっています。同僚のベテラン女性教師F先生から「孫に日本語を教えてほしいのですが」と依頼され、週に1度、F先生の娘さんのお宅へ通っていました。家庭教師といっても、孫の心ちゃん相手の勉強は30分ほど。毎回、料理名人の父親が作る絶品の夕食が楽しみで、食後は夫婦と時間を忘れて世間話に花を咲かせました。帰りは「夜道は危ないから」と父親がバイクで宿舎まで送ってくれ、さらには果物やらお菓子やら大量の差し入れまで。心優しいファミリーとの濃密な時間に、どれほど癒されたか知れません。
 2枚の写真にまつわるエピソードだけでも語ればキリがないほどで、このコラムの文章を書き進めるうち、喜怒哀楽を共にした人たちの顔が次々と浮かんできました。残念ながら、この先、再会する機会がなさそうな人がほとんどですが、彼らの幸せを願わずにはいられません。
 中国社会における「関係」の基本はギブアンドテイク。しかし、思い起こしてみると、僕の場合は、圧倒的に与えられたものが多かった気がします。
 はじめから「中国人とは仲良くできない」と決めつけている視野狭窄な日本人は、日本人どうしでもコミュニケーション能力が欠如しているはず。多少なりとも中国と関わっているのなら、中国人の本当の「情」を知らず、うわべだけの付き合いで終わってしまうのは、実にもったいない話です。
 まず、われわれ日本人が胸襟を開き、相手に歩み寄ってみては。「関係」づくりの第一歩は、それほど難しいことではありません。
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